チップについて
皆さん旅館というと、チップをあげなくてはいけないところだと思っていませんか?紋屋では、別注文料理のご注文があった時のみサービス料をいただいておりますが、他の宿では宿泊料の他にサービス料を頂いていることが多いので、基本的にチップは要らないのです。
以前にも書いたことがありますが、チップは本来必要ないと私は思っています。お客様の前に出ない板場の人間は、本当は一番気を使っているのに、めったに頂くことはなく不公平だと思います。掃除をする人・布団を敷く人・ご到着時にお茶を出す人や厨房からお料理を係り毎に分配する人、花活けをする人や様々な細かい手配を行うフロントなどは、その対象になることはほとんどありません。
宿屋のサービスは、どこのセクションがかけてもおもてなしとして成り立たないのですから、直接食事を出す人だけがお世話しているわけではありません。どの人が大変で、どの人が大変ではないということもないのです。昔の客室係はお迎えからお茶出し、食事出しと下膳、布団敷き、お見送りから掃除やお部屋のセットまで、全て一人でまかなっていました。そうなるとやはり、『少しは心付けを差し上げないと』と言う気になってきますね。でも今はそういう旅館はほとんどありません。
一人の係が料理出しと下膳をするとは限りませんし、朝食が会場食やバイキングの宿も多いのです。お部屋出しでない場合は、全く心配はありません。なにか落着かないと思う方は、皆さんでとお菓子を一箱下されば、みんなに配分します。全く無くてもいいのです。外国ではチップが当たり前になっている社会ですが、日本ではそうでないのです。
旅館はチップをあげなくてはならないので、気が重いなどと避けている方も少なくありません。お若い方でわざわざ本を読んでお世話になる係にあげるものと勉強してきて、こちこちに固くなっていらっしゃる方も時々あり、だから旅館にお客様が少ないのかしら?と思うこともあります。誰にも気兼ねなくのんびりする為には、お部屋出しより個別会食場のほうが良いのかもしれませんね。
先日、あるおなじみさまが、わざわざ客室係と板場に分けて、チップをくださいました。本当に有り難い事です。布団を上げに行ったら布団の中からもチップが出てきて、私のところに届けられました。あとで布団敷きの人間へのお心遣いだったことが分かり、心底素晴らしいお客様ぶりだと感心しました。経済的に余裕があっても、そこまで内情は普通お分かりにならないと思います。社長と私が行ったリゾートホテルでのことです。ワインが大好きな主人が、いつも集めているワインのラベルをその時のウェイターに頼みました。翌朝、朝食にレストランへ向かうと、昨日のラベルがシールにではなく、きれいな台紙に貼り付けてありました。前日はどうやらソムリエがお休みで、いつものラベル剥がし用シールがあるものとウェイターは思っていたのでしょうが、あいにく在庫が切れていたのです。たぶんその人は大変な思いをしてラベルはがしに挑んだであろうと推察されました。感激した主人は、ごくわずかな金額ではあったものの、少し包んで渡しました。
もともとチップとは、感謝の気持ちであげるものだと思うのです。まだそのサービスが気にいるかどうか分からないのに、チップを渡すのは、あげなければ良かったと思う危険性が残っています。本当に良かったと感じたときにだけ、気に入った方に気持ちで差し上げたらいかがでしょうか。チップを楽しみにしている係りも無くはありませんが、不公平をなくしたいと切に思います。宿屋の中には全部集めてみんなに配分するところもありますが、お金に関する問題は揉め事のはじまりであり、すっきりしない部分が必ず発生するのがいやなところです。
以前、入りたての従業員がお客様をお部屋に案内し、チップを頂戴しました。それをみんながいる前で、実際にお世話する係に半分にして「はい」とあげたことがあったそうです。そのときの異様な空気が目に見えるようですね。
病院などでは、『お心付けは固くお断りいたします。』と張り紙がしてあるところもあります。私が胃潰瘍で入院した時、そう書いてあったので心配しつつ退院してからお礼を持っていきました。そうしたら、退院後だったため快く受け取ってもらえました。お世話になったことへの感謝なら、誰でも嬉しく受け取れるものなのでしょう。
チップをあげるから良いおもてなし、無かったら良くないおもてなしでは情けないです。たまに紋屋のアンケートに「チップをあげたら途端に態度が変わった」とかかれるお客様がいらっしゃいます。多分それは、お客様のほうが色眼鏡で見ていらっしゃるのではないかと思います。気持ち良いサービスを受けたら、受けた側も御礼を言いたくなります。最近はなかなか気に入る接客をしてくれる人にもめぐり合わないので、たまにものすごく感じが良い接客に出会うと感激し、買い物をした私のほうがお礼を言って帰ってきます。そうする事によって接客側も嬉しい気持ちになり、より良い接客が出来るのではないでしょうか。接客する側ももちろんチップはあり難いのですが、お褒めの言葉として返って来ること。自分のファンになっていただけることの方が、もっと遣り甲斐につながると思います。日本におけるチップへの考え方そのものが、どこかおかしいと感じます。気持ち良い接客のためにも、サービス業全体のレベルアップの為にも、是非皆さんもご一考下さい。
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