要望
紋屋では客室にアンケートを置き、皆様からのご意見をお伺いしています。お応えが直ぐにでも出来るものと出来ないもの、また絶対に不可能なものもあります。どちらにしても様々なご意見は、私達の宿作りのヒントとして、かなり役立っています。
ひとつ叶えればまた更に上のご要望、また多種のご要望が出てきます。これはきりがない分野であり、楽しくもあれば辛くもあります。予算が十分にあればかなり楽に叶えられますが、いつも厳しい状況で営んでいます。宿泊料金の値上げはせずにずっと頑張っておりますので、利益を減らしているようなものかもしれません。しかし、今は気遣いの時代であり、バブルの頃と大きく変わってきています。景気が良かったころは、何か買えば必ずそれにちなんだDMが、また全く関係ない分野からも、その買い物リストを読み取ったところから多くのDMが舞い込みました。
いまは、買い物をしてもDMを送ってもいいか、季節のご案内を送ってもいいか、メールならいいかなど多くの店で聞くシステムになっています。様々なお声に応えていく姿勢が感じられます。もちろん紋屋でもアンケートで伺っています。今の時代の特徴なのか、メールなら良いというお答えが多いようです。
うるさく色々なところからDMが来てもゴミ箱に直行してしまうのですから、ゴミを減らす意味でも、そうした気遣いは大切かと思います。最近はご予約の時も、電話番号は携帯電話の番号である事が多いです。ご家族に内緒な場合もあります。必ずご本人が出ると言う意味もあり、いよいよ個人のプライバシーに敏感な時代を迎えているのでしょう。私が紋屋に来たころは、お部屋のアメニティーも決まりきった歯ブラシとタオル、髭剃りくらいでした。お客様からのお声にしても、アンケート用紙に沢山書かれない限りは放っておくという姿勢でした。団体の宴会客ばかりだったころは、細かいおもてなしも必要なかったのです。
この頃は細かくリサーチして、いつも何とか予算内で早く実現できるように、色々知恵を絞り、ネットの利用も含めできる可能性を探しています。お客様側には分からない様々な問題があるのです。
例えば宿屋の浴衣。洗濯が激しいので早く縮んでしまいます。全部を取り替えるのは大変なので、少しづつ違う柄などをいれて対応しています。最近多いお声としては、幅広浴衣です。着丈は普通で身幅が広い浴衣を望む方が多いのです。考えてみれば当然なご要望です。
洋服にS,M,Lがあるように、また着物や着物用の下着にも幅広のものがあるのですから、ないほうがおかしいですね。ところが実際は、幅広浴衣はメーカー側としては全部特別注文なのです。反物を染めるに当たって最小ロットは80枚から100枚。既製品の取り扱いがありません。
メーカー側にそれはおかしいのでは?と言っても、何所のメーカーも昔からのやり方を変えようとしません。お客様からの細かな要望にこたえていかなければ、メーカー側も潤っていかないはずです。少し頭を柔軟にすれば、ゆくゆくは塵も積もれば山となっていくのではないでしょうか。
若い女性は最近着たことがないから、もしくは着られないからという理由で、ずっと洋服姿の方もあります。作務衣にしようかとも思いますが、いっぺんには無理です。少しづつ取り入れ方法を考えていきたいと思います。
館内のスリッパも、今時流行らない古いスリッパをやっと2年前に変えました。しかし、今は足が大きい方が多いようです。いろいろなスリッパ見本をいろんな人に履き比べしてもらい、やっと決めたLサイズのスリッパだったのですが、それでも小指がはみ出すという苦情を頂きます。もう1年以上前から表面を拭くことが出来て、横幅も大きく見栄えがいい、しかも高額でないスリッパを探していますが、それもなかなか難しい注文のようです。消費者が求めているものを作るのが製造会社。例えば化学繊維を扱っている会社も、今は新しい革新的な素材作りに懸命です。昔は吸湿性といえば綿でしたが、単純な綿は放湿性にはやや問題があります。吸湿性と放湿性両方に優れた新繊維がスポーツ製品や下着メーカーで発表されています。
ところが着物の下着メーカーは、いまだに夏は昔ながらの更紗ときまっていて、私が好きだったキトポリというべたべたしない繊維が、この頃作られなくなってしまいました。これも消費者の声が届いていない証拠です。
今は、消費者の声に敏感になって、工夫して何らかの形で叶えていくことが必要だと思います。売上を上げたいなら尚のこと、細かな要望を叶えるべく努力して欲しいと思います。
私は着物を毎日着るので、立ったり座ったりして腰の部分が磨耗しにくいように、裏地のつけ方を京都の着物メーカーにお願いしています。雑誌でその紹介がなされていても、「そんな仕立て方はしている人はいない」という返事が来たことがあります。夏帯をクリーニングに出しても、平気でお太鼓柄の中央を折って来る。信じられないと言いたくなります。どんな小さいお声にも常に真摯に耳を傾け、その実現に努力をする。それが結果として商売の繁栄につながっていくと信じます。
お越しになるお客様のお声は、確かのご尤もと思うことが多いです。しかし、それを全て叶えていくにはかなりの時間とコストが掛かります。それでも諦めずに、これからも時代の流れを感じつつ宿作りを勧めていきたいと思います。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
ご到着のお客様が車から降りると、お子さんがシロクマのぬいぐみを持って来た。それをフロントカウンターにいる家内に伝えると、大のシロクマ好きなので「♪~」と嬉しそう。後でそのシロクマについて聞くと、「うちのシロクマ君の方が可愛い!」と言い張る。大のおとなが、シロクマのぬいぐるみの事で子供と張り合ってどうするの(笑)(by aruji)

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