賛否両論の料理
旅館では、お風呂や料理、接客サービス、館内の備品、様々なことが評価の対象になります。今回のテーマは料理なのですが、最近非常に美味しいとかなり誉められるか、もしくはまったく想像と違っていたことに難色を示されるか、両極端になってきました。私が紋屋に嫁ぐ前から、献立会議は行って来ました。しかし、その頃はまだ年に4回しか献立は替えませんでした。また一度決まっても、こちらが注意していないと、繁忙期に煮物が出来合いに勝手に変わっていたり、盛りつけが雑だったり、揚げ物がかなり早くに揚げられていたり、やはり早くにゆでたうどんが一塊になったまま出されていたりしました。
献立内容も段々お馴染み様が増えてきても、何時も同じ鍋物、決まりきった内容に終始し、魚づくしで野菜はおまけ程度にあるだけでした。少し付け合せのレモンが大きいと言っただけで、臍を曲げる調理人がそのころはいました。食べては美味しいことは美味しいのですが、何時食べても同じ、かわり映えがしない、私達経営陣にとってはちっとも良い料理には思えませんでした。房総と言うと、舟盛りやサザエのつぼ焼き、イセエビのお造り、鮑の踊り焼きなどを思い浮かべられますが、鮑やイセエビは高級素材ですから、通常の宿泊単価ではなかなかお出し出来ないのが実情です。
そうしたなかで、向こう三軒両隣の宿と同じような料理にならず、しかも頻繁にお越しいただくお客さまが飽きないお料理をお出ししたい。盛りつけも洗練されたものであって欲しい、見た瞬間に美味しいそう!と言う叫びが聞こえてくる料理であって欲しい。色合いが美しく、季節感が感じられ、決まりきった内容や盛り付け方に限らないでほしい。
デザートも何時も同じ物ではなく、和食を食べた後に口当たりがさっぱりとするものであって欲しい。要望は数限りなく、何度も何度もやり直し、ダメなものは宿題にして、和食に限らない盛り付けの研究と少し変わった食材さがし、飾りに使うような小さい野菜の向きひとつにも、みんなで考えて器との調和や全体の印象など、いつも小さな努力を重ねてきました。私たちも評判が良い和食店に行ったり、食品市に出かけたりして、自分たちが気にいっている料理をヒントにしてもらって、様々な意見を言ってきました。まだまだ紋屋の料理はすごいと思えるものにはなっていませんが、早く季節ごとの定番料理や、メインに決め手となるものの骨格ぐらいはつけたいと念じています。
海辺のものを中心にしても、単純に刺身やグリル的なものではなく、もう少し手を入れた凝ったお料理。和食の域を出ないで、しかも新しい和食のスタイルで、よくある旅館料理にはない料理が、今の紋屋の献立になります。  (今年の夏のお料理の一例) 椀 物  調理長創作「豆腐の和風ヴィシソワーズ」
 *ジャガイモで作るヴィシソワーズを、豆腐で和風に作りました
 前 菜  海老のヨット
 *冷製ふろふき大根とあん肝のゼリーを重ねた舟体に
   揚げた春巻きの皮を帆にしたヨットに海老が乗って
 お造り  洋皿盛り 天の川によせて
 *天の川のように盛った烏賊刺に星型にくり抜いた人参や芋   の唐揚を散らし、他にお造り数点を洋皿に盛り付けました
 煮 物  冷やし煮物 真夏の太陽ソース
 *季節の野菜を夏の太陽のような真っ赤なトマトソースで
 焼き物  穴子の五穀焼
 *五穀米のおにぎりの上に穴子を乗せました 
   一緒にお召し上がりください 
 酢物替  南京豆腐
*彩り良く、順菜・いくらを添えました
 中 皿  牛多々喜ドミノ仕立て
 *牛肉のたたき・浅漬けにした大根・きゅうりがドミノ倒し
 台の物  ヘルシー!津美れカレー鍋
 *ふんわり仕上げた青魚のつみれと野菜のヘルシーな鍋
   カレー風味ですが、ベースは味噌味です
 果 物  トロピカルフルーツのポン酢ゼリー掛け
 *フルーツにポン酢で作った自家製のゼリーを掛けましたしかし、ホームページを見ての直接のお申し込みではないお客様、例えば仕事場の契約の宿屋だからとか、もしくは旅行会社任せな宿選びだと、時々お客様から困惑の声が聞こえてきます。海の素材を使っていても、「海の食材にすべき」と言う声が出るのが不思議です。
料理はお好みがあるので、献立会議の場でも意見が分かれることがよくあります。ですから今の賛否両論は却って以前に比べると、個性的な料理を確立しつつあると思っています。
中には、昔の料理のほうが良かった、創作料理なら東京でいくらでも食べられると言う方もあります。でも、私たちも良く探しますが、すごく美味しい創作料理を食べさせてくれる店は、それ程多くありません。
アンケートでも料理がすごく美味しかったというものが大変多く、調理場の努力を誉めたいです。また、それに対して殆ど口もつけないようなお客様に遭遇すると、大変お気の毒な気持ちになります。
紋屋は、これからも更に個性的な宿屋を目指し、前進していきたいと思います。
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◆素顔の女将◆
家内は、「屈折してるの?」と息子に問い掛けるつもりが、「屈伸してるの?」と聞いたため、「屈伸運動なんかしてないよ!」と突っ込まれていた。(笑)(by aruji)

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