清々しい一夜
「貴方が今までに行ったところで、感激するようなサービスをされたことがありますか?」と、あるセミナーで聞かれたことがあります。
考えてみると、そう感激する場面にはなかなか出会わないことが多いものです。そればかりではなく、ここのお店は感じが良いと思える店も少ないのが現状です。もちろん、そういう私のところもミスをしたり、至らなかったりする時もあるわけですが、たまには「素晴らしい!」と感嘆できるような場面に出会いたいものですね。私の誕生日は8月のお盆の時期。毎年倒れそうなくらい疲れ果て、誕生日を祝うどころではありません。社長の誕生日は9月初めなので一段落していますが、毎年お互いの誕生日は、あとから二人でゆっくりお祝いすることにしています。
春と秋には、いつも館内の備品や売店の新規商品などを探しに、国際展示場で開かれるギフトショーという展示会に出かけます。そのついでに、美味しい食事をしゃれたレストランで、ということになりました。
いろいろ調べて、麻布十番にあるイタリアンレストランに行くことにしました。展示会ですっかり歩き疲れていましたが、小雨が降ってきた中で、そのお店は明るい温かな光を放って見えました。
店内に一歩入ろうとすると、黒服の男性が迎え入れてくれました。しかし、時を殆ど同じくしてあとから入ってきた、しかも予約の時間が私たちよりあとのお客さまが先に案内されたので、そのときはちょっとがっかりしました。
私たちが案内された地下の壁面には、多くのワインがずらりと並んだセラーがあり圧巻でした。地下の店内はやや薄暗いものの、非常にさっぱりとした内装になっています。隣のテーブルはそう遠くないのですが、意外としっかり目隠しになるガラスボードが間に設置されていました。
席に通されてから直ぐにメニューを持ってきてくれた若いウエイターは、本当に爽やかな笑顔でした。食べられない食材なども聞いてくれます。お水を持ってきてくれた女性も、献立について説明をしてくれた時の表情といい大変感じがよく、しかもてきぱきしていて良い印象でした。メニューはまた、どれにするか心のそこから迷ってしまうほどの種類があり、嬉しい悲鳴でした。あとから聞いたのですが、このお店の献立は、定番商品もありますが、多くは毎日変わるそうです。いったいどうやってこのように多い献立を考えるのでしょうか。
お料理の説明も大変流暢で、どのようなワインに合うかも的確な答えが直ぐに返って来ます。一品一品一口味わっただけで「おいしい!!」と言う感嘆の声がもれるほどの美味しさであり、見た目も綺麗。展示会の疲れが吹っ飛びそうな喜びでした。使われているワイングラスがどこの国の物か聞いた時も、こちらの意見とウェイトレスさんの意見が食い違い、「調べて参ります」 こちらが「いいよ、たいしたことじゃないから」と社長が言っても、「いいえ、私としてもはっきりしたいと思いますので」と。 後で分った時は、「私もすっきり致しました」と言っていた仕事への姿勢が好ましく思えました。
一品一品「大変美味しいです。」とつい言ってしまうのですが、3品目が運ばれてきた時に、「『このお店を選んで良かったね』と言っていたところなんですよ。」とウェイターさんに言うと、「そうおっしゃって頂く為にだけ働いています。」という言葉が自然にかえってきて、心底驚きました。
しかも全く厭味がない言い方でした。この店で働いている人たちはみんな感じがよく、しかもこの店で働いているプライドを持っていると感じました。逆にそれだけの気持ちにさせる教育やモチベーションの高め方、経営者の方の従業員に対する声掛けや待遇は、そのようしているのだろうかと考えてしまいました。
料理の美味しさは、サービスの違いからもきていると実感できました。料理もイタリア料理の枠にとらわれず、フランス料理や和食に通じる部分もあり、感心することばかりでした。社長がこのお店に予約を入れたときも、これは期待できそうだと感じたそうです。まずこの店は、「ハーブを多く用いた献立内容ですが、大丈夫ですか」と聞かれたのです。また「お席の希望はございますか」とも聞かれたので、タバコを吸わない旨を伝えると、デザートまで喫煙はご遠慮願っていること。極力隅の席にするよう心掛けるとも言われました。そして「今回のお食事は、ご接待や誕生日などのお祝いですか」とも聞かれたそうです。特に誕生祝いという訳ではないが、家内の誕生日が8月で私が9月なので、その意味を含めた食事だと伝えました。そうしたことを聞いてくれたレストランは、初めてだったそうです。
そういうことを聞くからには、何かしてくれるのかな?とも思いましたが、期待はせずに出かけました。でも、デザートが若干時間が掛かるなと思っていたら、二人のウェイトレスさんが同時に私たちのテーブルにやってきて、呼吸を合わせて「お誕生日おめでとうございます。」と大き目のプレートに美しく盛られたデザートが出てきました。ホワイトチョコレートにHappy Birthday to you と書かれてあります。しかも、社長が予約の時に誕生祝というわけではないと言ったので、小さな声でささやくように言ってくれたのです。
紋屋でも以前は、誕生日欄に書いてある日がご宿泊日当日だったとか、事前にメールを頂戴して判っている時は、シャンパンを出していました。しかし、チェックイン時に「今日誕生日なんだけど」とわざわざ言ってこられたり、また本当は誕生日ではないことも見え見えなのに、わざと誕生日なことにする方もいて、お祝いして差し上げたい気持ちが萎えてしまいました。紋屋には、お祝い用のおめでとうプランもあるので、そのような方はなるべくおめでとうプランをお勧めし、今では違った形のおもてなしをするようになりました。
でも今回、私達が実際に祝ってもらえて、やはり嬉しいものなんだと実感しました。デザートや献立の一部に祝いの字が書かれているだけで、十分なおもてなしになりますね。
ここで働いている人たちは、料理の試食をしているのかしらと、あとで気になりましたが、私たちの宿も、夏以外は全員には試食をさせていないので、毎日変わるわけでもなし、試食はしてもらわなければならないと思いました。特に一人の若いウェイターの「そうおっしゃっていただくためにだけ働いています」という言葉は、紋屋の従業員は誰も言えないだろうと思いました。素晴らしいサービスと料理を味わったと同時に、多くの自分自身への反省も思い浮かび、もっともっと努力しなくてはと思えた、大変清清しい気持ちの一夜でした。
これからいいおもてなししをご提供する為にも、また他店での勉強を重ねていきたいと思います。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
「クリームがいっぱい!」と、会議中の私の携帯に家内からメールが入った。ソフトクリ-ム?それとも生クリームのケーキの事かな?誰からもらったんだろう?何にしても美味しそうな話だと思い、喜び勇んで電話をかけて聞くと、.....クレームだった。(>_<)(by aruji)

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