もてなしを受けて
昨年から、私たちは一年に一度、秋に遅い夏休みを取ることにしています。そのために毎月お互いに積み立てをして、心と体を癒す為の、勉強ではない本当の意味での休暇を取ります。
一年中着物を着ているので、暑い思いをしている私にとって、必ず清々しい涼しさを得られるところとして、今年は北海道を選びました。社長は何度も足を運んでいますが、私ははじめてだったのです。予報ではずっとお天気が悪かったのですが、空港に着いたら良いお天気が私たちを迎えてくれました。雨降り続きの関東とは違い、湿度も温度も快適でした。しかも旅行中ずっと気持ちがいい晴天だったのです。
私達としては珍しく長い(?)休暇の三泊四日の旅でした。広い道内で、私が1番観たかったのが富良野の先の美瑛の丘。それ以外はとにかく涼しく、広くて山のある風景と素敵な宿泊施設であること。勉強ではないので旅館ではないこと。そして、一日はアロマが受けられることが私の希望でした。
社長は美味しいものが食べられればご機嫌な人なので、私の希望を踏まえて宿泊先を選んでもらいました。その結果、一日目はニセコの近くの真狩村、後の二日は札幌のホテルに泊まることになりました。真狩村では、「マッカリーナ」というオーベルジュ(宿泊が出来るレストラン)に行くことが目的でした。羊蹄山の麓にあり、野菜を中心にした四季折々の目にも美しい料理とその施設が有名だそうです。コンサートや料理の研修なども行われます。
建物もよくアートされていて、シンプルで清潔感があり、静寂で大人の優雅な空間でした。我が家のあたりも静かですが、比べ様も無いくらい本物の静けさが体験できました。料理も野菜がとにかく新鮮で、たっぷりと出されます。コーンスープの特別な甘味。洗練された盛り付けと活きの良い野菜と魚介のコラボレーション。ひとつひとつ口に含む喜びが味わえました。
朝食も、ホテルのレストランのバイキングより格段上の行き届いた内容で、冷めないように工夫された焼きたてのパンや、新鮮な牛乳、農場のハム、道内で採れる野菜と果物等など。私たちは感動しながら料理の写真をとり、口に運びました。これがもう少し笑顔のあるサービスでもてなされたら、もう本当に至れり尽せりだったと思います。聞くと、真狩村との第三セクターだそうです。完全な民営ではないので、仕方が無いかなという気がしました。次の日は、小樽から札幌に向かいました。小樽は北一硝子など代表的な観光物産館を中心に多くのお店が建ち並び、運河や倉庫を利用した街づくりが成功していて、活気があります。観光スポットはこうして作られるのだなと感心しました。
夕食は札幌市内の「しんせん」という酒房にお邪魔することとなりました。場所を聞くのに旅行者であることを伝えると、店主である板前さんが店の前まで出迎えてくれました。なんとも言えない温かな笑顔。遠くからわざわざ来てくれたゲストを、気持ちよく迎えよう、もてなそうという心意気がみなぎっています。
余り観光客は来ない類の店なためか、何故この店を知ったのかなどを聞かれながら、板長と一緒に料理の腕を振るう若手の女性板前さんも格好よく、楽しい会話を交わしながら、北海道ながらの新鮮な魚料理に舌鼓。
個人的にはこの旅行で、私はこの板長さんのもてなしに、一番心が温まりました。北海道の食材の話、昨日泊まったマッカリーナの話、明日何所へ行くか、何所で食事するかなどの話。私たちが何所から来ているか聞いての食材の説明。今夜の宿泊先。北海道は何度目かということも。そのお客様に合わせた情報や趣向をこらすのでしょう。コースターには、板長さんの笑顔が印刷されていました。本当に素晴らしい笑顔です。私もよくお客様から笑顔で癒されたといわれますが、本当に心からの温かい笑顔以上のもてなしは無いのかなと感じました。社長と板長さんの話のもっぱら聞き手の私にも程よくきちんとフォローされていて、遠いながらも又是非来たいなとしっかり心に刻まれました。もちろん料理が美味しかったことは言うまでもありません。
私は夜アロマの施術を受け、気持ちよく熟睡。スパは、大変な賑わいでした。サロンも女性ならではの贅沢な気分を十分に味わえました。宿泊したホテル全体の接客は、残念ながら不合格。心が伴っていない、単純にこなしているだけのものでした。施設が新しいうちはそれでも良いでしょうが、古くなってからが大変だと思いました。大きい施設となると教育も行き届くのが難しいかもしれませんが、現在の支配人はそれを感じ取っているのでしょうか?三日目は、知らない土地だという事と移動距離が長いことなどから、ツアーバスを利用しました。ドライブインでの食事が余りにもお粗末でひどく、今後はこうしたツアーでも、単純にお土産を買わせるという目的ではない、客を楽しませる内容に留意していただきたいと思いました。
しかし、美瑛の丘は何よりも私の心に感動を与えました。自然の威力はなんとも言葉に換えがたく、十勝岳の大噴火がもたらしたとい独特な起伏のある大地が何時までも変わらないことを願わずに居られません。北海道の大地の広さは、日頃忙しく人が多いところで様々なストレスにさらされている人間を、見事に日常から解放してくれました。
札幌に戻ってからは、正統派のフランス料理レストラン「ル・ジャンティオム」に出かけました。シェフが料理のオーダーを取りに来てくれます。些細な部分での料理の微調整、食材の変更などが出来るからなのでしょう。シェフの料理へのこだわりを感じました。
料理は、最近では珍しい本当に正統派のフランス料理でした。私自身は、フランス料理は余り食べなれないので少し重かったのですが、それでも大変美味しく頂きました。社長はもう大満足でニッコニコ。
せっかく美瑛の丘の写真美術館で買った写真集をレストランへ忘れてきてしまったのですが、なんと当日中に忘れ物がホテルに届けられました。ジャンティオムでは、当日泊まっているホテルの話などはしていません。前日のしんせんで、次の日のレストランを聞かれたので話すと、しんせんの板長とジャンティオムのシェフは知り合いだったのです。しんせんの板長が、シェフによろしくと言っていたと伝えるようにと言われていたのでお伝えしましたが、きっとシェフはしんせんに電話をして、私たちの宿泊先を知らないかと尋ねてくれたのでしょう。シェフと板長の素敵な連携は、私たちをやさしく包んでくれました。今回の旅行中に私はぼんやりしていたせいか、ある観光施設でハンドバックをトイレに置き忘れましたが、無傷で戻ってきました。東京あたりでは、1分前に置き忘れても決して出ては来ないのに、信じられない出来事でした。本来は戻ってくるほうが当たり前だったはずですが、今の人間社会はなにかが間違っています。
広い大地に囲まれていると、人間も大きくなるのかと思いました。また、時々は人間は心と体を休ませ、大自然の中でぼんやりする、自然と対話すること、心と体の疲れを一掃することも大事だと思いました。
日々の忙しさと様々なストレスで、私達夫婦も心がささくれ立って、特に私は一度心の中を空にしたいと思っていました。仕事のこと、家庭のこと、これからのこと等、お互いが思いやりをもって人生のパートナーとゆっくり話し合う余裕も、つい失われがちです。
今迄私たちは、いつももてなす側の人間でしたが、たまにはもてなさてみることも良い勉強になりました。旅はそれぞれの思い入れがあり、それなりな金額と時間をかけてお客様はお越しになります。そっと傍で見守りながら、ごゆっくりしていただけるように今後も努力をしていきたいと、気持ちを新たに考えました。
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◆素顔の女将◆
家内との北海道旅行の折、レンタカーを借りて長距離ドライブをした。今時はレンタカーにもカーナビが付いているのだが、信号も無くどこまでもどこまでも道が続くので、カーナビからの指示も全く出ない。家内は思わず一言「北海道のナビって暇ね」 ほんとだねぇ~(by aruji)

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