うっすらとした光
先日ある施設の方からお電話を頂きました。重度の障害を持った方々のデイケアなどを行っている支援員の方です。「お話しだけでも聞いていただけないでしょうか。」というので、お話を伺うことにしました。
お越しになったのは、3人の若い支援員の方々でした。宿屋にはちっとも若いスタッフが集まらないのに、障害者のケアーという大変なお仕事を、こんなに若いスタッフが支えているのだなと私は驚きながらお迎えしました。
話の内容は、重度の障害を持つ方々の入浴と食事を受け入れてもらえないかということでした。予定日は、たまたま私に予定が入っている日でした。少し私がいないことが気になりましたが、予定宿泊数は少ない日でしたし、お越しの時間も、前の日のお客さまがお帰りになってからの時間帯でしたので、何とかなりそうな気がしました。
しかし、障害者といってもどんな障害なのでしょうか。聞いて見ると、支援員の皆さんは重い沈黙状態が続き、私は心配になりました。からだが不自由な方、心も体も不自由な方、色々いらっしゃる様子でした。
初めてのところへ行くと、パニックを起こしそうになる人もいらっしゃるようでした。しかし、ボランティアの方々もご一緒にお越しになるということでしたし、ちっともバリアフリーになっていない紋屋の建物内で、支援員のかたがOKなら、たまには社会貢献もしてみたいという気持ちになりました。
しかし、知り合いでたまたまそこの施設にボランティアに出かけていた人から、「単なる社会貢献のためなら、受けないほうがいい。負担になるだけだ。」と言われてしまいました。私たちは障害の無い、もしくは少ない方々しか普段お迎えしていません。「わくわくして迎えて欲しい。」とそのボランティアは言います。
でも、私たちは何時もどおりのこと以外は、出来そうもありません。実際にその重度の障害者の方々を拝見させていただいたときに、心から優しい気持ちで微笑んでお迎えできるのでしょうか。
悲しいことに、障害のない人間は障害者に優しくない事が多いのです。いけない事ですが、私たちも通常のお客様と重度の障害を持つ方々を一度に多く、一緒にお迎えすることはなかなか出来ません。そのようなことから、普段この施設に通う方々は、家と施設以外にはなかなか出かけられないそうです。入店禁止の貼り紙がしてある店もあるそうです。施設ができるまでは、毎日自分の家の片隅で何所へもいけない毎日だったのだそうです。私はその話に、非常に心を痛めました。(何所へもいけないのか。。。)五体満足で、健康な人間のほうが心が広くない。目が見えない人は、目が見える人が怖いそうです。電車等に乗ると、杖を突いていても突き飛ばされてしまうのです。
体が傾いていて智恵遅れが有る状態だと、大概の人は目をそむけてしまいます。うめき声がもれるような状態だと、露骨に嫌うそぶりをする人もいます。障害者も、決して障害を持ちたくて持っているわけではないのに。
そういう私たちも、通常のお客様からのクレームを恐れて積極的な受け入れはしていません。私自身、どれほど障害者に優しい気持ちを持てるのでしょうか。
最近は、障害者までは行かなくても、引きこもりやパニック障害、心理的な滞りが指摘されています。人間誰でも病みやすい状態なのです。できる範囲からまずはこの機会にやってみることにしました。打ち合わせも、下半身に全く力が入らない方などのトイレの把握、和式トイレでは厳しいということで、二つの客室のトイレを使っていただくことにしました。男性の方が多かったのですが、女性のほうが入浴は手が掛かるそうで、介助も大変だそうです。
結局、3回も丁寧な打ち合わせをし、ファクスの遣り取りもかさね、当日を迎えることになりました。
当日は、台風23号が通過した日の朝でした。地方で大きな被害が出て、前夜からテレビで報道されていました。ところどころ通行止めになってやしないか、お越しのみんなが施設にまずは着けたかなど、心配になりました。結果としては、施設に来ている障害者の方々にとって、大変良い経験になったようです。支援員のかたからもお礼のファクスをいただきました。
最初は反対していたボランティアも、「受け入れてくださって、こんな良い日を提供してくださって、感謝します。」とメールを下さいました。みんな、この日をとても楽しみにしていたこと、喜びすぎて笑ってしまい、なかなか食事が進まない方もあったそうです。手助けを必要とするので、一度の入浴は無理です。控え室を設けて少しづつの入浴でしたが、みんな満足の様子だったそうです。
支援員の方は、急な階段や手すりがない大風呂にきっとご苦労もあったでしょうが、難しいだけにやりがいもあったかもしれません。喜んでもらえることがきっと一番の、彼らのやりがいにつながるのでしょう。
紋屋の係たちは、「普通のお客様より全然手が掛からなくて、すごく助かったんですよ。」と口々に言っていました。「本当は、とても大変だろうと思っていたんですけど、皆さん片づけまでして頂いて。」と驚いていました。実際には、紋屋の従業員は、殆ど障害者の方々と接してはいません。これが実際に触れ合った時にどうなのか、全員が優しい気持ちになれるのかどうかという課題はあります。
私たちも、毎日お客様に喜んでいただきたい、その一心でお迎えしています。今回のことで、バリアフリーでなくてもできる可能性はあるのかなと思いました。普段はなかなかお迎えできない方々を受け入れて、うっすらと日が射すような温かさを覚えました。
私たちができることは、まだまだ今している事の外にすることがあるのかもしれません。今回は、色々な意味で私たちに良い機会を与えてもらえました。その機会に感謝し、機会を与えてくださったみなさんにも、心からお礼を申し上げたい気持ちです。
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◆素顔の女将◆
東京から帰りの家内を駅に迎えに行った。車中では私が今お気に入りのラブソングのCDを流し、外は十三夜の満月で良いムード♪~ その満月を見ながら家内は、「スーパーサイヤ人が大猿になりそうな満月ね(注)」と一言。全然ロマンティックじゃない!(by aruji)
(注)大ヒットマンガ「ドラゴンボール」で、主人公のサイヤ人・孫悟空は満月の光を見ると凶暴な大ザルに変身して大暴れする。ちなみに、私が今お気に入りの曲は、orange range の「花」です。)

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