8年目を前に
紋屋には長年に渡って活躍してくれている従業員がいます。そのうちの一人が昨年の12月末にその正社員としての任期を無事勤め上げました。本当に素晴らしいことでまたありがたいです。30年も同じ会社に勤めるということは、これからは、もうなくなっていくことでしょう。
私がまだ若い頃は、勤めに出れば一生その会社に自分の人生を託して、自分がその会社を背負っているという意識の元に働いたものです。しかし最近は、そのような意識がすっかり薄れてしまいました。私が紋屋に入社する前から、そのように永く紋屋で働いて、私よりずっと年上の従業員が多くいることを感心だと思っていました。また逆にその人たちがいなくなったらどうなってしまうのだろうと、不安も覚えました。
入社以降も、何時もそのことが頭から離れず、劇的な世代交代をどのように迎えたらいいか、考えあぐねてきました。なかなか簡単には全てを把握しきれない、宿屋の経営者としての業務をどのように学んでいいか、何時も悩んで来たのです。
とにかく何時も何事も良くじっと見る。そこから色々な考えや方向性が生まれてくる。そして自分の手足で実感し、よく聞き取りもする。様々な事件の検証をする。その原因の究明と今後の予防策を考える。不安を覚えながら、少しずつ少しずつ私も先輩従業員から吸収してきました。早いもので、私も紋屋に入社して今年の5月で7年の月日が経ってしまいます。前職の時は、たったの数年でもうベテランの域に達したのに、余りにも広範囲な仕事は、まだまだ新米の域です。
それでもいつの間にかみんなを動かし、ついても来てくれるようになってきました。一部の従業員とは喧嘩もしましたし、色々な心の葛藤がありました。この7年の間に多くの従業員が年齢を重ね、退職していきました。そして、多くの新しい人材が育ったり育たなかったりして今日を迎えています。
私はみんなを力で引っ張っていくのではなく、みんなと一緒に考え、会社造りをしたいと願っています。一人や二人で考えるよりも、多くの人の智恵が重なることで、こちらも良い刺激となり、思いもよらないアイディアが生まれてきます。
一人一人を良く理解し、その向き不向きを見極めて、一番適した場所を提供する。平等に声かけをする。なかなか難しいことですが、こんな私でも、見ていること、声がかかることはみんなにとって大切なようです。私でも認めてくれることが励みとなり、元気が出るのです。
力も自信もなくて、何時もその重みに耐えかねて、病になっていた私。仕事でも人付き合いでも、家族関係でも何時も同じでした。私が成長することをみんなも望んでいると気づき、こんな私でも期待してくれていることが素直に嬉しいと思える。その気持ちに応えなければとあせるのではなく、今はもっとどっしりとゆったりと構えていられる自分が不思議です。昨年秋ころから、ベテラン従業員の任期満了の準備も含めて、客室係達の手配を私がすることにしました。その人によって、体力や気力が違います。好き嫌いや向き不向きもあります。人と人との相性もあり、全ての面で行き届いた手配をするのはなかなか難しいものでした。
様々な嫉妬がうずまき、女の職場は骨が折れます。一人を立てればもう一人が立たなくなり、なるべく平等で、しかも個人個人の性格と体力に即した内容にするなど、考え始めるときりがありません。
それでも、人の手配をはじめたことで、今まで見えなかった物が見えはじめました。はっきり何とはいえないのですが、とても大きな力が湧くイメージが浮かびます。
一人一人が持っている個性と力を充分に発揮させること、それが何より上に立つ者として重要なものだったのです。
どんな宿にしていくか、どんな方向で進んでいくか、不安に立ち向かいながらも、良くその時を見つめることで全てが開けていく感じがします。私がやりたいこと、したいこと、それを休みなく実現に近づけていく日々の小さな努力の積み重ね。
大きなことではなく、小さなことの鍛錬ではないかと思うのです。何時も自分に自信がなくて、不安で仕方がなかった私ですが、やっと女将として一人で立っているような気持ちがします。これからも、是非応援してください。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
家内は自分のベッドに入る時、「よいしょ、よいしょ、よいしょ」と言いながら入る。なんなの?と聞くと、ベッドが冷たいから気合を入れて横になるのだそうだ。気合の入れ方にも、人それぞれがあるようで(笑)(by aruji)

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