手作りの飾り付け
「宿屋には季節感が大切」と、以前から当たり前のこととして様々なセミナーなどでも聞かされてきました。こちらも常々心得ているつもりですが、よく考えてみると、通常、売店やフロントの飾り付け・料理以外では、それほどのこともしていないのが実情です。忙しさとやることの多さに目が回ってしまっていて、まだまだ努力不足だと感じます。もっと色々試みなくてはと思っていた時に、たまたま今まで刺繍屋さんだったという人が紋屋に入ってきました。宿屋の中には縫い物が一杯有り、今までもプロ級の腕前の人が一人いて、多くの縫い物を手がけてきました。座布団カバーが擦り切れたり、暖簾を縫ってもらったり、従業員の作務衣がやぶけたり、浴衣や半天の衿のかけ替えなど、きりがありません。
余りにも縫い物があるので、それ以上はなかなか頼みづらかったのですが、もう一人縫い物ができる人が入ってきたとあれば、少しやりたいことも実現しそうです。
季節ごとに館内の音楽を変えるとか、館内全てに季節ごとの飾り付けをすること。お部屋の額なども本当は季節感がある物に変えられたらいいですね。従業員の制服にも季節感があるとか、考え出したら大変ではあるものの、きりがないほど色々あります。
今までも、館内の各所に生花を飾ってきて、それは紋屋にとってかけがえのないおもてなしの一つになっています。そして今回はじめてみたのが、お手製の布製の飾りです。何所の店でも見かけるプラスチック製の果物や花など、それが布で出来ているだけでも、何か温かみがありそうです。まず最初に、クリスマスの飾りつけを作ってもらいました。ギフトショーで見つけた可愛いクリスマス用品を思い出し、そのイメージで作ってもらいました。初めてだったので、その作ったものを実際館内の何所にどのように飾るか、非常に悩みました。
クリスマスの装飾品は、全体的には非常に良く出来上がり、まるで買ったもののようです。作るまで余り時間がなかったので、簡単な方法で作ってみたものもありました。ただし、中にはのり等で貼り付けたものが、後になって反り返ってしまってちょっと失敗でした。おそらく回を重ねるごとに、完成度も上がってゆき、毎年その飾り付けが楽しみになるかもしれないと、いま胸がわくわくしています。飾り付けの日になると、結構時間もかかって疲れるのですが、こうした芸術的な分野は全て自分の予想以上に私は好きなようです。ふだんではみられないくらい、私はニコニコしているらしいです。そう指摘されて、そういえば私はこうしたことが好きだなと改めて実感しました。
クリスマスの後はお正月の餅花。この次は桜、そのあとは紫陽花、あとは朝顔や流れ星とか、夢が膨らんでいきます。何時も同じ飾り方にならないように、また飾り方の工夫も非常に大事です。毎年新しく作り直すのも大変なので、少しづつランクアップするようにと考えています。はじめてみると微妙な部分で難しく、完成度を高めるのはそれなりに少し時間もかかりそうです。作る材料の調達や、デザインを決めるにも時間がかかります。私は針仕事は全く出来ない人なので、本屋さんに行って慣れない分野の本を見つけるのも一仕事でした。
また縫うほうも、私のイメージを具現化するのに結構労力を要します。だからといって、あまり粗雑な造りにすれば、お客様からの評判も上がらないかもしれません。
それ程莫大な予算もかけられませんが、ひとつづつ手作り感のあるおもてなしにしたいのが私の気持ちです。私も字のほうでお部屋の額作りを少しづつ進めています。完成度の問題もあって一年に3つから4つ作るのが精一杯というところです。布の館内の飾り付けでは、けっこう私の姉からもらった派手な着物が役に立っていて、私のもう締められない派手な帯なども、今後装飾品として役に立つようなタペストリーに出来たらと考えています。
生地は、なるべく捨てないで、最後の最後まで使ってから捨てるようにしていますが、思いもよらない飾り物になったら、古い布地も幸せなような気がします。
飾り付けに向いている人や、作るのに向いている人、何時も言っていることですが、その人一人一人の適性を見極めて、最も向いているところで活躍してもらう。お互いに幸せです。常日頃、思っているだけで終わっている考えや、忘れている構想など多く有り、それをひとつひとつみんなで力を合わせてやり遂げていきたいです。それができるか出来ないかで、これからの紋屋が変わるように思います。頭を休ませている暇は、今年もなさそうです。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
ある日、例年より早く急に花粉症が始まった。薬が無いので、仕方なく大きなマスクをしたところ、「マスクをしたあなたの顔、ステキよ」と家内が褒めてくれた。しかしよくよく考えてみると、顔の半分以上がマスクで隠れているのに、ステキと言われても、全~然嬉しくない!(by aruji)

ご予約・プラン紹介はこちら