“感”を磨く
紋屋のセラピストから、「感を磨くことが大切」と以前から聞かされてきました。初めて聞いた頃は、それがどういうことなのか、良く分りませんでした。
私はもともと何事も感じやすく、嫌なことや辛いことの時は特にダメージがありすぎるのです。感じやすいことが、余計な思い込みを招くこともあります。そのため、感じやすいこと自体をとても嫌ってきました。
感じやすさが内気な部分を増長し、今でも大勢の人が集まるところへ行くのが苦手です。どうでもいいことに直ぐに傷つき、動揺し悪い方向へ考えがちでした。しかし、経営者という職業は、感覚を鋭くもっていないと方向性を間違えたり、大事な事に気がつかなかったりしてしまう場合もあります。
私が紋屋に来る前までは、紋屋は団体旅館だったので、お馴染み様の存在を気にかけている人は、宿の中にいませんでした。私は前職のとき、お顔と名前が一致する顧客様を最低400名くらい持っていましたので、凄く不思議に思いました。
これからは団体ではなく、個人のお客様が主流になる時代ではないかと感じました。まして紋屋は大きな宿ではないので、どう考えても団体向きではなかったのです。大勢のお馴染みさまであふれている宿になれないかと、随分考えました。海辺なので湿気が気になり、嫌な臭いが館内にこもりやすいことを感じ、何とかしたいと思いました。今では館内の香りがいいと、皆様から喜んで頂いています。
毎日お客様と接しているうちに、小さいお子様連れにうちはきっとうけるだろうと強く感じました。それは、お子様をおんぶしてお食事しているお母様の姿を拝見した時、なんとかしたい!と感じたことからはじまりました。毎日、それからお子様連れのお客様に、どんなものがあったら、便利になるべく自宅と変わらないように過せるかを伺っていきました。接客業においては、そのお客様のお好みを察知する能力は必要不可欠。それはお客様に限らず、従業員に対しても同じです。肌で感じるお客様の表情や空気、雰囲気から感じることで、トラブルを避けられたり、または大事に至らずに済んだりします。
チェックインでお客様にお目にかかる時、このお客様はホームページをよく読んでいらしているお客様なのか、又は全く見ていないお客様かどうか見分けます。どちらかというと話し好きか、そうでないか、短い時間の中で色々な事を感じ取ります。
その日に担当している係が、たまたま賑やかに話すタイプで、お客様が物静かな時は、やや控えめにするよう話します。以前は殆どのお部屋に御挨拶に伺っていましたが、今はプライバシーを重んじるお客様が多いので、特に喜んでいただけそうなお客様を選んで伺うようにしています。
それは他の係、例えばお部屋へのご案内係や客室係に聞いても私の感じ方と違うので、余り当てには出来ません。私がお目にかからなかったかたの場合は、遠慮しています。
もちろん時々外れることもありますが、この方は、昔ながらの旅館料理の方が好きそうなお客様だなと思うと、たいてい紋屋の創作和膳への批判がきます。
お部屋の襖を開けたときの空気で、喜んで頂いているか、そうでないかもだいたい察知できます。お客様の廊下を歩いていらっしゃる時のお姿や、売店で下見をしていらっしゃるときの感じで、ほんのわずかなお客様の空気?のような物を感じ取るのです。今、または今後どういう風に、紋屋が進むべきか、または自分がどのような動きをするべきかなど、殆どその空気のような流れ、または音のようなものを感じ取るところからはじめています。
今までやってきたことは、小さな事の積み重ねです。お客様のお嫌いな食材を伺うことになったのも、気付きからでした。海がないところからお越しの場合は、ご指定がない限りなるべく海が良く見えるお部屋にするなど、それがお客様に評価されつつあります。
毎日お客様のアンケートを拝見していると、殆どが当たり前のようなことに感心してくださる、またちょっとした気づきに感謝してくださっているのです。常に今に安心してあぐらをかかず、毎日ちょっとずつでも前進し、失敗したら何故失敗したのか良く観察し、解決法を編み出していくこと。そして継続させること。
“感”を磨き、小さな気づきから始まって商品化し、それを徹底し継続させる。どんな職業でも同じですが、それが出来きれているか否かで、その企業の力に差が出てくるのではないでしょうか。
そういう意味では、まだまだ努力不足、力不足の私です。しかし感じる力を嫌がらず、大きく育てていくのと行かないのとでは、これから違ってくるでしょう。ある意味では非常に疲れもしますが、今までのように自分の特性に後ろを向くのではなく、積極的に活用したいと思います。
はじめは、宿屋のおかみになりたくないと思っていましたが、感じやすい点においては、宿の改革の仕事に向いているといえるのかもしれません。
ちっとも、豪華でも新しくもない紋屋ですが、お越しになるお客様に少しでも喜んでいただく、寛いでいただける宿になるために、大いに“感”を磨いて参りたいと思います。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
最近、携帯電話のゲームにはまっている家内は、息子に新しいゲームをダウンロードしてもらった。始めのうちはいつも数秒でゲームオーバーになっていたが、ある日、息子にゲームのテクニックを教えてもらったところ、永くプレイするようになった。「随分上達したじゃない」と褒めると、何も答えずプレイを続けていたが、その時、誇らしげに口元が緩んだのを私は見逃さない(笑)(by aruji)

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