今年の毎日書道展(毎日新聞と毎日書道会が主催する全国規模の書展)に出品したことは、以前書きました。私の師・石飛博光先生による選別会(毎日書道展に出品しても良いかどうかの、石飛門下の選別会)に出かけただけで、その数の多さと、会員皆さんの力のすごさに圧倒されてしまいました。自分の力不足を実感し、何か魂の抜け殻のような状態がしばらく続きました。
2月の半ばから5月初旬にかけての房総のオンシーズン中に、必死になって300枚を越す練習に励み、すっかり重症な腰痛に悩まされもしました。6月中旬ころ、結果はそろそろ出るはずと待っていましたが、なかなか来ないので、いよいよ落選だなと覚悟を決めていたところ、なんと初出品だったにもかかわらず入選しました。
驚きと感動と喜びとが一緒に体を通り抜け、今までの苦労がやっと報われ、周りの家族や紋屋、今の境遇に感謝する気持ちも溢れてきました。今回の出品作品は、オレンジ・レンジのヒットした曲『花』の冒頭部分。社長の書いてほしいという要望にこたえて書いたものでした。詩の内容は、
       花びらのように散りゆく中で
       夢みたいに君に出会えたキセキ
       愛し合ってケンカして
       いろんな壁二人で乗り越えて
       生まれ変わってもあなたのそばで花になろう
というものです。字数が多くて苦労し、自分では精一杯でした。その入選連絡がきた日に、偶然にも社長がその『花』が主題歌に使われている映画「いま、会いに行きます」のビデオを借りてきました。最初から泣きっ放しの感動的な映画でした。
その中で、主人公の二人がお互いに「あなたのそばにいることが幸せ」とか、「あなたのそばは居心地が良い」ということを言っていたのが印象に残りました。
ビデオを見る前に、私達二人が祝杯をあげたレストランでは、お互いに結婚8年目の感想を話し合いました。二人とも、前の結婚には感じなかったものを感じていたのです。お互いに再婚同士。正直に言って、結構山もありました。結婚3年目は仕事のことで3日に一度は喧嘩していました。お互いの子供の問題は深く複雑で、そのことで喧嘩になると、非常にこじれて再婚の難しさを嘆きました。
社長は、「素顔のおかみ」の文章の印象とは違い、本当はかなり気難しいので、一度へそを曲げると5.6日は機嫌が治らず、それが一生続くならもうやっていけないと、何度思ったか知れません。
大おかみ、おかみ戦争も時々激しい戦いがあり、そういう時に全く頼りにならない夫に失望もしました。
そういう私も、最近は本当に料理もたまにしか作りませんし、月に何度も東京へ帰ります。経済観念もお互いの間に差があります。体も丈夫ではありません。そして社長の息子達の良い母親も務まりませんでした。経営者としても、まだまだ足りていません。妻として、どれだけ夫の要望にこたえているのかという問題も、かなりの部分で答えていないと思います。
旅館業を営んでいる人の所へは、初めから嫁ぎたくはありませんでした。誰に相談しても、「止めたほうがいい」と言われましたし、どんな苦労かはわからなくても、想像を絶する苦労が予想されました。旅館業というだけでなく、ばばつき、子供も二人います。どう考えても、悪条件です。
それなのに、何故社長の結婚したいという要望にこたえたかというと、どうしてもそばにいると、離れたくなくなってしまったからでした。それがなぜなのか、それが目には見えない「相性」というものなのでしょう。お互いの容姿は、決してそれぞれ自分の好みでもないのですから、おかしなものです。今回の、オレンジ・レンジの詩は、社長が私にそう思ってほしいという気持ちなのだそうです。「へぇー、そうなんだ!」と改めて驚いてしまいました。生まれ変わってもあなたのそばで花になりたいかどうか、まだ答えは出ませんが、少なくとも私の今の結婚は、ゴールではなくスタートでした。
お互いが様々な困難にぶつかるたびに、話し合い、理解し合い、譲り合い、支え合い、助け合い、反省し合いました。衝突は、できることならないほうが望ましいのですが、お互いが家でも商売上でも手を携えて、重いブロックを積み上げ、ひとつのものを創り上げようとしているという実感があります。これが本来、結婚の形なのかなと思います。
今は、病める時もまた健やかなる時も、ともに苦しみも喜びも分かち合い…とどこかで聞いたことのあるような生活です。一生をかけてゆっくり、私はすこしづつ愛情を育てていきたいと思っています。いつか生まれ変わっても、あなたのそばで「花」になりたいと思えるように。
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◆素顔の女将◆
家内の作品が入選した毎日書道展は、今年で57回目を数える日本最大規模の書道展らしい。昨年はおよそ2万9千点の出品があり、5日間の審査の後、入選が決まったという。家内のように初出品で初入選は珍しいらしい。頑張った甲斐があったね(^-^) 次は入賞めざして頑張ろう!(by aruji))

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