海辺での生活
海がお好きな方は、海が一望できて良いなと思われる事と思います。
確かに紋屋からの眺望は毎日見ていても素晴らしいものです。
風が強いのは嫌いですが、見ているぶんには、波が高く荒れる様子は勇壮で気持ちがスキっとします。
波がない静かな日も、晴れていれば海の色は非常に美しいですし、夕日や朝日も感動ものです。かもめが飛んでいる姿や鳴き声も、旅情を誘います。
外に出て散歩をすれば潮の香りがしますし、海からの気をもらえて元気になります。
浜で貝を拾ったりすれば、なおさら底知れない海の力を自分のからだの中に溜め込むことができます。
そういう私も、もうずっとそうしたことはしていませんが......。
でも観光ではなく、毎日この場所で商売をするのは大変です。エアコンの室外器はすぐ潮風で錆びてしまいますし、風が吹けばすぐに窓も汚れます。
一番困るのは雨風が一緒にやってくること。特に南西の風のときが問題です。
海辺の風は予想をはるかに越える威力があり、風が下から吹き上げてくるので、窓でもサッシの下の敷居から雨水が染み込むようにあふれてきます。
潮のせいでなんでも痛みは激しく、だんだん金属疲労のようなものができて、ほんの少しの隙間から雨水が予想も出来ない経由をたどって、変な場所から雨漏りをおこしたりします。
ビルやマンションをご自身で経営していらっしゃる方はよくお分かりだと思いますが、古い建物は何かとトラブルが多いのです。
それでも、海辺でなければ、まだましなのでは?と思います。山は山なりに、雪や動物、いろいろな虫(これは海も同じ)の被害があって、大変だと言う話は聞きます。
でも山は季節感がいっぱいですし、海の幸より山の幸のほうが、コストがかからなくていいなと思います。ないものねだりでしょうか?

山も土砂災害で流されることがあるかもしれませんが、海はやはり台風が一番の恐怖です。
数年前、戦後最大の台風が房総に直撃したときは、本当にとんでもない恐怖を味わいました。大きな台風が直撃しなくても、近くに来ることはよくあります。
お客様側は、台風が旅行の時にやってきたという事実を、後になると懐かしい思い出としてとらえる方もあるようです。
再度来館になったお客様から「ほら、あの時台風が来ていて、お部屋移動してくださいましたよね。良くして頂いて。。。」などと。
いつの台風のことかな?と急には思い出せません。台風でなくても、大きな低気圧や急激に発達した爆弾低気圧などいろいろなことがあるので、頭の中のテープがまわりきりません。
それでも、そのときの対応を覚えていてくれて、台風が来てきっとそれなりに怖かったりなさったでしょうに、良い印象のほうを記憶に残して下さるのですから、ありがたいですね。たったひとつ助かるのは、水の被害が出ないことでしょうか。土砂崩れや川の氾濫などは、千葉は少ないです。
私が小さい頃は家にまだ雨戸があり、台風が来る前は、窓ごとに釘を打って飛ばされないようにしたものです。幼いながら、台風は怖いものなのだと体で覚えたように思います。
今は、都会ではみんな窓がサッシになって、雨戸がある家は余り見かけなくなりました。そのかわり、ビル風がやっかいな被害をだすこともあります。
海辺は、台風でなくても季節によって、毎日のように強めの風が吹くことがあります。風向きによって、強くても被害はない場合もあります。紋屋は最南端にあるので、北風のときは安泰です。
私達が休憩している裏の古い部屋は、風が強い日、トイレのたまり水が右左によく揺れます。頻繁に震度3から4くらいの揺れの中似いるような感じでしょうか。大女将が紋屋に住んでいた頃は、台風になると社長の家によく避難していました。

お客様が使う布団を干したいと思っても、海辺では風がある日は湿気が多いので、干すことは出来ません。雨の次ぎの日は、いくら晴れていてもまだ湿気が強いです。布団干しは、いつもかなり時間がかかって苦労しています。
私はこちらに引っ越してきた来た当時、陽がでているからと、風があっても洗濯物や布団を干していました。
ところが、海辺ではどんなに天気がよくても、洗濯物や布団は返って湿ってしまうのです。海風特有のべたつきがある状態になります。部屋の中も、海辺独特の湿気があり、すぐに物がカビます。
頻繁にたんすや物入れの扉をあけるか、いつも開いておく。そうしないとたちまちです。
宿内でも、お客様がお帰りになった後、お部屋の洋服ダンスや押入れなど、チェックインの直前にいつも閉めるようにしています。それくらい湿気はこもりやすいのです。そうした理由もあって、紋屋は館内の香りにかなり気を使う
ようになったのでした。
少し暇な時期になると、余り使わない部屋の喚起や拭き掃除に注意しないと、部屋自体がかびてしまいます。それでも最近は、この田舎の生活の静けさや土の匂い、自然がいっぱいあることを実感しながら生活する尊さは十分に感じます。
特に、夜の月光の明るさ。これは都会では絶対実感できないことなので、せっかく田舎にきたら、車で余り建物がない場所までドライブすると実感できます。
我が家の芝生等は、どこのライトがあたっているのかと思うほど、真っ白に光ります。神秘的ですよ。海が見えると一口に言っても、その見え方、見える景色は多様で、恐らく紋屋のような岩場のごつごつとした風景と、灯台がある風景を一緒に楽しめるところは、少ないものと思います。
まれに、かもめがかなり多く群れて海岸にいることがあります。その多さに驚いて地元の人にきくと、いわしの群れを狙って群れているのだそうです。
昼食に部屋へ行くと大女将が、「友達が浜にいわしがいっぱいあがっているから、早く採りに行こうと電話してきた。」と言っていました。それも東京育ちの私にはびっくりな話でした。

年をとったら温かいところで暮らしたい。そのようにおっしゃる方は少なくありません。芸術に親しむ方には確かに良いところだと思います。
でも、観光で一日来ただけでは、計り知れない苦労もあります。都会と田舎の中間くらいが、一番住みやすいかもしれませんね。房総は今、花真っ盛りです。今年は特に温かいので、お早めにお出かけください。



--------------------------------------------------------------------------------

◆素顔の女将◆ 東京行きの高速バスは、途中、海ほたるでトイレ休憩を取る。 家内と出かけたある日、トイレから戻ると、先にバスに戻った家内がどういう 訳か違う席に座っている。わき目で見ながら、『一緒に座るのが狭苦しいのか な』と思い自席に戻ると、後から「席を間違えたぁ~」と戻ってきた(笑) その席の人が戻って来なくて良かったねぇ。(by aruji)

ご予約・プラン紹介はこちら