癒しについて
「いつも忙しい女将さんは、どうやってストレス解消してますか」というメールをいただきました。現代はストレス社会。多くの人達が精神的にも肉体的にも疲労やストレスを覚え、癒されたいと思い今、街のあちこちに「癒し」の文字が見受けられます。紋屋でも、香りと音楽の流れる「癒しの湯」というリラクゼーションのための貸切専用風呂を造り、それに関連してアロマを導入しました。
人の心の癒し方は、人それぞれなのだと思います。年代や男女別、職業別それぞれに癒し方があるでしょう。「ストレスが溜まってしまって.....」と言う頃には、本人が自覚しないうちに、かなりの量のストレスが溜まっているのだそうです。私は東京郊外の百貨店にいた頃、いつも音楽や雑踏の中でしたから、一番仲の良い友達と月に一度、近くの低山にハイキングに出掛けました。ちょっと山に入るだけで、驚くほどの静寂や緑が醸し出す空気に違いがあり、かなり歩いて筋肉は疲れても、いつも心は元気になりました。今はお互いに田舎に暮らしているため、どちらかと言えば都会に行きたくなりますが、都会の人ごみを見ていても、心が癒される事は決してないような気がします。
今の私の生活は、忙しい時は肉体的にも精神的にも極度の疲労とストレスですっかりやつれてしまいます。ですからオフになり、少々余裕がある時には、休日を取って一人でのんびり過ごす事にしました。我が家は海からは1つ山を越えたところにあり、家からの風景は、すっかり山里の中です。多くの緑に囲まれ、鳥達のさえずりや樹木がそよ風でざわめく音などに耳を澄まし、真っ青な空や庭に飛んでくる可愛いスズメ達の姿に目をやっていると、とても安らいだ気持ちになってきます。子供たちがいると、とてもハードな音楽がそれぞれの部屋から聞こえてきたり、TVゲームの音などでくつろげませんが、一人で過ごすと、嘘のようにのびのびできる空間が広がっています。
結婚前、主人の家に遊びに来ていた時、主人は会社へ出社してしまうため、家に一人でいる時間がありました。家の中に差し込む窓の風景が、この家で生活したら安らげるかもしれないという思いを抱かせました。結婚したら、今まで息子と二人きりだった生活から急に五人の騒がしい生活となり、宿の仕事と家の仕事の両方の時間に追われる毎日に、すっかり自分の時間を失ってしまいました。この頃になって、どうして以前は安らげた我が家での生活が、良く無くなってしまったんだろうと気づき、自分自身の時間や世界を作ろうと思い立ちました。娘の頃やっていた好きな習字をまた始めたのですが、好きな趣味に没頭できる時間は、私にとって至福の時となりました。
最近は、紋屋でもリラクゼーションのページを設けているせいか、一人旅の方が良くお越しになります。若い女性の方やご年配の男性の方が多く、一昔前には考えられなかった事のように思います。ご年配の男性は、絵を描きに、もしくは写真を撮りに来る方が多いのですが、比較的若い世代の女性や男性は、癒しに来ていらっしゃる様子です。それも今の時代の反映なのでしょうか。一人旅の方には、家族連れの小さいお子様のにぎやかな声は、癒しに反するもののように感じられるご様子で、お迎えする私達にとって頭の痛い部分です。
男性も女性も一人でどんどん行動できる事は、良い傾向だと思いますが、未だに一人旅お断りの宿が多いと言う事をお客様から伺い、少し驚いています。一人旅のお客様は、大勢でおこし下さるお客様より、こちらにひしひしと伝わって来るような本音をお話下さるお客様が多く、旅に対するお客様の姿勢やポリシーを受け取りやすいところが、宿にとってありがたいところです。私も、癒しにいらっしゃるお客様のお手伝いがどれほど出来るのか、紋屋がどの程度、癒せる宿であるのか、まだまだ取り組むべき課題は多いと考えています。
紋屋からの白浜の風景は全く有名ではありませんが、所々に顔を出している岩の形やその岩に上げる波のしぶき等とても素敵なのです。特に私が気に入っているのは、その日の天気、季節によって変わる海の色です。太陽の差込具合によっては、非常に幻想的な不思議な景観になる事があり、ぞくぞくするほどの美しさでした。仕事に追われていると、なかなかその美しい自然に目をやっている暇が無くなってしまうのですが、自然の中には人間を元気にしてくれる「気」がある事は確かだと思います。働き過ぎの日本人も、これからは仕事以外に自分の生きがいを感じるような趣味を持ったり、大きな自然の中で時間をゆっくり過ごす事を覚えていけば、ストレスも解消されるかもしれません。
私は、東京から内房線に乗って君津を過ぎたあたりからの車窓の風景が気に入っています。東京へ月一度用事を足しに帰っているのですが、今回の帰京では、東京ならではの物騒な事件に遭ってしまい、憂鬱な気分でしたが、このお気に入りの風景を見た時、本当にホッとしました。
ストレスが溜まったら、都会に住んでいる方は田舎へ、山の中の方は海へ、北に住んでいる方は南へ、とにかくいつもと違うところに身を置いたり、通常と違う時間の過ごし方や滅多に出来ない経験をしてみるのも良いかもしれませんね。自然からの「気」を心と体に充分に吸収させ、皆様が心も体も健康である様にとお祈りしています。
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◆素顔の女将◆
「素顔の女将」の原稿を考えていると、家内から「そんなことを考える暇があったら、もっと紋屋にお客様が来ることを考えなさい」と諌められた。た、確かに...。(^^;;;) (by aruji)

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