連続ドラマを観て
よくテレビで旅館の物語が放送されています。私は昔はやった「細腕繁盛記」
は知らないのですが、私が嫁に行くときに、まわりからそのドラマの印象もあ
り、「大変よね。よく行く気になったわね。」などと言われました。

いまは、NHKの朝の連続ドラマ小説「どんど晴れ」をよく引き合いに出され
ます。余りにも多くの人達からいわれるので時々観ましたが、ありえない設定
が多くて、いつも観るに耐えないことが多いのが事実でした。

しかし、以前観たとき、ちょっと考えさせられるシーンや言葉があったので、
ごく最近はなるべく観ています。皆さんはどのようのご覧になっていますか?



今回の「どんど晴れ」の中で、あるお客様がたまたま隣り部屋のお客様のお料
理が運ばれていくところに遭遇し、「うまそうだな。それは何?」と係に聞き
ます。「寒鰤でございます」と係は答えます。

そのお客様がお食事になると寒鰤が出ていない。その寒鰤は、お得意さまの特
別料理だったのです。「他の客には、要望の料理が出せるなら、自分はジャジ
ャ麺が食べたい。」とそのお客様がおっしゃられ、主人公の係が「少々お待ち
くださいませ。」とあわてて調理場へ走ります。

最終的に主人公の係は、「この『加賀美屋』でお過ごし頂くということは、
『加賀美屋』の伝統と格式の中でお過ごし頂くということ。『加賀美屋』の調
理場が自信を持ってお作りしたお料理を召し上がっていただきたいのです。」
と言います。

非常に良いシーンでした。その言葉がまったく嫌味が無いさわやかで熱意のあ
る接遇のなかで言い放たれたところがなかなか見事でした。



私はすごいなと感心し、反対に紋屋はそんなことは言えない。
そんなに伝統と格式は無いと、マイナスな考え方をしてしまいました。

その話を社長に話すと、「紋屋はもともと、高級旅館ではないのだから、そん
なことは言う必要も無い。あなたは紋屋の売りを何だと思っているの?」とき
かれました。


私は「温かさ」と答えました。すると社長は、

  「紋屋でお過ごしいただくということは、広々とした海をご覧になり、
   みんなで考え出した創作和膳を温かなおもてなしの中で召し上がっ
   ていただくこと。それをあなたなりに言えばいいんじゃないの?」

と言います。



私が嫁に来たときの紋屋は、確かに想像していたより汚くて古い宿でした。
おもてなしの内容も質も、私から見ればかなり下のランク。
高級旅館に嫁にいける自信はないものの、自信を持って私の宿に来てねと
宣伝できないものをずっと感じ続けてきました。

   施設が古い。

   投資が出来ないから、出来ることからやろうと、
   随分細かなことにひとつひとつこだわって改善してきました。

   おもてなしも、以前に比べたら格段の差です。

でも、まだ自信がないのですね。



最近、あるお客様のアンケートに、

  「想像していたよりもずっと中で働いているスタッフのみなさんが
   格好よくて素敵なことに感動しました。もう、子連れの旅行では、
   紋屋以外では満足できないかもしれません。」と書かれていました。


       なんという素晴らしいアンケートなのでしょう!

それなのに、女将である私がその素晴らしさに胸を張れず、古い施設を卑屈に
思っているのです。恥ずかしい事と気づかなければいけない。

うちのおもてなしの温かさ、スタッフの一生懸命さを信じ、自信を持って紋屋
にお越しくださいといえるようにならなければ、なかで働いてくれているみん
なに申し訳ないのではないか。



自信の“信ずる”と言う言葉は、人が言う、自らが言うと書きます。
それは、以前あるセミナーで教えてもらったこと。
信じると言ってしまう。言い切ってしまえば、自信は生まれてくるそうです。

ドラマの主人公がまわりのみんなを信じる力があることで、競ってきたライバ
ルが宿を去る。ドラマでは、いつも回りのみんなを信じ、宿を愛している主人
公のひたむきさに光があてられていました。



私自身が自分にまた紋屋に自信をもち、紋屋を愛し、接遇が千葉県一関東一と
もし評価されるようになれば、どんなに施設が古くても、それはものすごい財
産に違いない。


今日戴いたほかのアンケートで、

  「たしかにきらびやかさはないけれど、本当に温かな接遇に大満足した。」

と書いて下さった方もありました。


どんなに素晴らしい施設でも、接遇が悪い宿はたくさんある。
施設も良くて接遇も文句なく至れり尽くせりであれば、それに越したことはあ
りません。でも、先日のそのドラマの中で、あるお客様が、

  「余りにも至れり尽くせりすぎて。寛げなかったことが難なくらいかな」

とお客様が語っていたシーンがありました。



  至れり尽くせりすぎて寛げないのは、やはり良いおもてなしではない。

  温かく少し距離を置いて見守ることができるような接遇。

  まだまだ紋屋でも、不足している部分は接遇面でもいっぱいある。



だけれども、私は紋屋のおかみなのだ。

もっと自分自身が作り上げてきた紋屋を愛し、働いているみんなを愛し、
自信をもって誰にでも勧めることが出来るように、今までの私を戒めなくては
と感じました。


おかみ自身が、自信がなかったら紋屋は伸びない。

働いてくれるみんなにも評価して下さるお客様にも、申し訳ないのではないか
と気づきました。


ドラマは、かなりオーバーに作られていて、ありえないことが多いのも事実で
す。でもそれを見て、それが現実だと思ってしまう視聴者も多いようです。

ありえない部分は無視して、私は所々良い部分を吸収して勉強したいと思いま
す。

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◆素顔の女将◆
自宅に家内を迎えに行くと、どことなく元気が無く気落ちしている感じ。どう
したのかと聞くと、玄関にハガチ(=ムカデ)がいたと言う。梅雨でジメジメ
している昨今、そろそろ出てくる時期になった訳で、帰宅すると室内を注意深
く見回すことが習慣となった家内でした(^^;)
                              (by aruji)

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