旅の恥はかき捨てなのか
旅の恥はかきすてとよく言いますが、一生懸命お迎えしている私達にとって、そういう考えは、非常に悲しいものです。


小さいお子様がいらっしゃるならまだ分かりますが、大人だけのお部屋で、お湯のポットが壊されていたり、無料でお貸し出ししているアロンランプを 粉々に壊して、一言の謝罪も無く帰っていくお客様があります。

お風呂にいれてあるシャンプーや、化粧品をケースごと盗んでいく。
赤ちゃん用に貸し出しているコンセントキャップを持っていってしまう。
そのようなお客様が多いと、せっかくお越しのお客様がご不便が無いよう、いろいろ無料でお貸し出ししているものが、不足してしまう事態となります。

もちろん間違って自分の荷物と一緒に持ちかえってしまうケースは、よくあることで、こころあるお客様は、詫び状と一緒に送ってきてくださいます。


ところが、そのようなケースのほうが圧倒的に少なく、ひどいケースでは、お部屋の壁紙を1メートルくらいびりびりにはがしてしまい、平然としているお客様もありました。

そのお客様は連泊だったのですが、布団をたたんで積み上げ、壁紙のはがれた部分を隠そうとなさっていました。

連泊でも布団のシーツは取り替えますので、結局ばれてしまったのですが、申し訳ないという感情があるようには見えませんでした。



「オムツをお使いでしたら・・・」と申し上げると、「うちの子はもう取れています」と毅然とおっしゃるお客様。ところが、失礼ですよと言わんばかりのお客様に限って、お子様がおねしょをします。

旅館によっては単純に干しておしまいというところもあるそうですが、紋屋では、ふとんの打ちなおしやクリーニングをします。それには驚くような費用がかかります。皆さんはご存知ですか?


ある程度は、お部屋の備品・部屋の痛みなど、保険で対応できますが、半分以上をこちらが泣いています。中には、障子紙を破かないようにと、お客様ご自身で障子をはずしたり、穴をあけてしまうと、弁償しますとおっしゃってくださる方もあります。

障子の穴や破れは毎日のようにあることなので、その場は応急処置をして、その後、本格的に直します。夏休み空けは見事につぎはぎだらけの障子になりますが、それはむしろいかにお子様が多いかということで、逆にほほえましいと感じます。

それでも黙ってお帰りにならずに、ひとこと「すみません」とおっしゃっていただくのが、お客様であっても礼儀ではないでしょうか。

外国では、自分の子供達のいたずらを叱るだけでなく、よその子供であっても、常識を外れた行為に対しては叱責するそうですが、日本では、自分の子供達が公共の場で騒いでも、親によっては、全く叱ることがない場合があります。

こちらが無料でお貸し出ししているお子様用の椅子で、新しい畳を傷だらけにする。どうしてそんなことが出来るのか、私は不思議でたまりません。

     あくまで心優しいおもてなしは、
     お客様の常識やお客様側の優しさの上に成り立っています。



毎日お客様をお迎えしていると、この接客の仕事と言うものは、いかに普段からのこころ優しさが大事かが、よくわかります。

お客様に対しては良くても、従業員同士の間では別人という人も中にはいました。でも、結局はこの中にはいられなくなりました。

いつも一緒に過ごしている人には、常に優しく接することは難しいものですね。仕事ではないのですから、心と体が疲れていて思いやりが磨り減ることもあります。でも、そういうことがあった時のフォローこそ今後の生活にとって非常に大切です。

そうした事に常に心をくだく癖をつけると、接客の仕事も上手になる。
また、接客の仕事が上手な人は、日常生活も楽しく出来るのです。

人間の心というものは、単純でないところが難しいものです。憎しみやねたみ、嫌悪の情は自分のこころを苦しくします。いつもどんな人達に対しても、明るくたっぷりの愛情を注げる人間でありたいものです。


温かいおもてなしをする側は、こころ優しいお客様によって癒されます。お互いがハッピーになることが何より良いものだと思います。もっともっと良くして差し上げたいと言う気持ちになるのです。

     ですから、お願いです。

     どうか物は大事にしてください。
     自分のうちにある物でなくても大事にしてください。

私は物にも心があるとこのごろ思います。大事にされていると、物が喜びます。物は大事にすれば永く使えます。永く使うことによって、またものへの愛着が 生れてきます。

     ご自分のものだけでなく、公共のものも是非大事にしてください。

私達は一生懸命メンテナンスや器の金箔のはがれも補修し、襖の穴もなるべくお金をかけない方法で頭をひねって補修しているのです。

弁償をお願いしているわけではないのですから、せめてちょっとした謝罪の言葉を口にしてください。

謝るというのは結構難しいものらしいですが、私は、自分が悪い時は、きちんと謝ります。それが私の歩んできた姿勢です。

そうすると、やはり生きていくのが楽しくなる。
楽しくない気持ちでいる日が少なくなると思います。


是非是非、お願いしたいと思います。

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◆素顔の女将◆
私の定規は、縦半分がスチール製で逆側がプラスティックの、ちょっとカッコいい代物。だが最近、ちょっと見つからず気になっていた。ある日、ふと家内を見ると、その定規を使って仕事をしている。
「その定規....」と私が言いかけると、「私の!」と胸を張って答える。「どうした?」と聞くと、家内の机の上にあったので、自分のものだと思ったという。物を大事にする人である(笑)                              (by aruji)

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