◇本当の夫婦◇
先日、ご年配の男性がお一人でお越しになりました。


チェックインのときはお目にかかれなかったのですが 他のお客様のチェックインをしているときに、明日のバスの問いあわせでフロントにおみえになりました。

ご到着なさってから、2,3時間が経過していた頃でしたが、館内を楽しく散策なさったそうです。


私に「おかみさんですか? もう少しご年配の方かと思っていました。」と、おっしゃるので、JTBからのお客様でしたが、紋屋のホームページなどご覧になったのかなと、想像しました。

館内のあちらこちらの装飾品や、私の書などをカメラに収めていらっしゃいます。気に入ってくださったのかなと、少し嬉しく思いました。



そのお客様は、月の座でお食事でした。


係の一人が

「お客様が、『おかみは美術系の大学を出たのか』と聞いていました」

と言います。


普通の国文学科ですが、書などを見てそう思われたのかもしれないと思い、そのお客様のお席に、次の料理を持っていくための片付けをしに行きました。

すると、そのお客様は奥様を亡くされ、奥様は生前、器がお好きだったと。

こちらの器もとても凝っているが、おかみが選ぶのか、どんな基準で選ぶのか、そして、大学は美術系なのかとお尋ねになりました。


先程、フロントでお目にかかったときからとてもお優しく品があり、きっと良いお仕事をなさってきた方に違いないと思えました。

すると、ずっと銀行にお勤めだったそうで、いつも帰りは遅く、家の中のことはすべて奥様に任せっぱなし。

奥様はいつも不満をおっしゃっていたそうです。


会社内で偉くなると威張る癖がつき、ちっとも奥様をいたわらなかったと、そのお客様はおっしゃいます。


ところが奥様がご病気をなさり、晩年は一生懸命介護をご主人様がなさったのだそうです。

毎日一緒に過ごし、今までの奥様のご苦労を知り、ご自分が思いやりに欠けていたと反省し、最後になってはじめて、やっと本当の夫婦になれたとおっしゃっていました。


途中から涙を流され、私も泣きました。
奥様も最後はとてもご主人様に感謝をされ、
気持ちがお互いに通じ合えたことを喜び合ったのです。


思いも寄らない、いいお話を伺いました。




前職のときも、ご年配のお客様からよく、

「主人が毎日家にいて、息が詰まりそう。

3食作らなくちゃならないし、どこへも出かけられない。
おまけにずっと位が上で威張っているから、手におえないのよ。

昔はそれでも良い給料取ってきたからまだ我慢ができたけど、
今は何も無いし、良いことが本当に何も無いのよ。」

と愚痴をおっしゃっていました。


また、逆に男性のお客様からは、毎日朝10時くらいになると、

「お父さん出かけてきてください。
夕方5時くらいまでに帰ってきてくださいよ」といわれるんだと、さびしそう。


どちらの気持ちも良く理解でき、

どちらも悪いわけではないなと思ったものです。



仕事人間も退職したら自分の趣味を持ち、明るく元気に第3の人生を歩めたらいいのですが、仕事だけが命と言う方も少なくありません。


経済的に余裕があって、「これからは毎月温泉だ!」とおっしゃっていた方も、趣味とは違うのですぐに見るからに生気をなくされ、“元気に旅行”というイメージとはかけ離れた方もいらっしゃいました。


定年後も何らかの形で仕事をするとか、趣味を持ってクラブで活動するとか、友人達と集うとか、なんらかの社会性がないと、急にがっくりするようです。



夫婦の形も、定年後は変わる。


このお客様のように、最後は本当の夫婦になり、その奥様をしのびながら、奥様がお好きだった陶芸や絵をお一人で楽しまれる。

きっと、亡くなった奥様とご一緒にいるお気持ちでお過ごしになっていらっしゃるのだろうと、考えました。



4人に一人が60代以上の世の中になった日本。


楽しく元気に充実した余生を過ごし、もし夫婦がふたりとも健在なら、やはり一緒になって良かった、
信頼し合え良いかたちで何ものにも替えがたい存在であってほしい。


最後はどうしても一人になりますが、ただ、さびしいだけでなく、このお客様のようにお一人でも行動ができたらいいですね。


どなたの言葉か忘れましたが、こういう歌があります。


いつか、二人になるための一人

そしてまた、いつか一人になるための二人


良きパートナーと幸せな人生を歩みましょう。





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◆素顔の女将◆
紋屋は、お客様にとって「心やさしいおもてなしの宿」でありたいと思う。

今日のメルマガを読むと、
家内はまさにそれを具現化したような思いを持った人だと感じる...。


ただ、夫婦喧嘩の時は別ですけど(^^;) 



(by aruji)

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