◇新しい職種◇
紋屋に嫁いでから、おおまかに、私は、売店とフロントで働いてきました。

係が一人減ったこともありますが、食事処「月の座」が出来てから、自然に私が月の座に入り、社長が裏で手伝うというスタイルが出来上がりました。


やってみて、もしかしたら今が一番楽しいかもしれません。

もちろん客室係の一員として完全に働くわけではありませんが、やっとお客さまと直に接することが出来ているという実感があります。



客室におかみとして挨拶回りすると、

そのときの数分しかお客様の様子がわかりませんし、

一番困るのが、おかみが部屋に来たと堅苦しくなる、

窮屈に感じる方がいらっしゃることです。

食事処だと、私は作務衣に着替えているので、おかみだとは気がつかない方が多く、


気さくにお話をしてくださる。

お料理を美味しく召し上がって頂けているかが、直に伝わる。

お好みもはっきりとわかってきます。

会話のチャンスが増える。

お声掛けによってさまざまな接点が生まれ、


多くのエピソードに遭遇できる。


もちろん嫌なこともありますが、接客が好きな私にとっては、楽しさが倍増したことは確実です。


先日、二泊でお越しにお客様がいらして、1日目は月の座、二日目は部屋食になったお客様がいらっしゃいました。

ご到着のときから、ずいぶんとお話好きだなと思っていましたが、食事処でも、楽しくお話させていただきました。

目が合うと手招きなさるのです。

焼酎に梅干をつけてお飲みになるのですが、その梅干を追加したくてお呼びになるのです。

うかがって、「梅干ですね。何個お持ちしますか?」というと、2個とか3個とかお二人で言い合いしながら、なんとも愛らしいご夫婦様でした。


ご案内係りから、


「おかみの書をずっとご覧になっていましたよ。

字を見るのがお好きなんですって」と聞いていましたが、

そのことには、1日目は触れずにいました。

二日目になって、雨でお出かけにならなかったのか、
テレビ番組表がキーボックスに入ったままだったので、お届けに行きました。


その日は、食事処がなかったので、着物を着ていました。

すると「あ、あれ?今日は何の係?」と言われました。

その反応も楽しいものでした♪~


私がおかみだと分かると、さらにお話がはずみ、

ご自分も自営業で苦労していらしたことや、

お子様たちのことなど、色々教えてくださいました。

そして、何より「字」を見ることが好きだとおっしゃって、
私の作品を書き写していらっしゃいました。
書いてある意味やその作品にかける思いなど、多くお話させて頂きました。


はじめからおかみとしてお話したとしても、

喜んでは下さったとおもいますが、

1日目が係としてだったからこそ、

より一層親しくお話が出来たように感じました。

たかが配膳ではありますが、さんホテルやレストランに行って、印象に残るさわやかなサービスをうけ、それを覚えていらっしゃいますか。

きっと少ないと思います。

単純にお料理を運ぶだけなら誰でも良いわけですが、お料理を美味しく食べるためのご説明や、必要最低限以外のお話がどれくらい出来るか。



それは、意外と難しいのです。


しかもその最低限以外の話しは、決して自分が中心になってはいけません。

また、あまり話が長くなりすぎても駄目なのです。



そのお客様によって、

話したい方と話しかけられたくない方といらっしゃるので、

それを見分けられること。


それでも、全く料理説明以外は話さないのでは、やはり気が利きません。


二人いて、一人は全くは話さない場合でも、どちらの顔も見てお話する。
そうでないと、話さないほうの方は、無視されたように感じます。



それができるか。


お客様の心の隅に、ちょこんと気持ちがあったかくなるようなものをプレゼントできる、そんな接客が大事です。



私はお酒は飲みませんが、お客様と接しているうちに、

いける口の方はこの冷酒がお好きな方が多い。

余り飲めない女性陣にはこちらのワインが人気など、

段々つかめてきます。


そうしたことからセールストークにつながり、喜んでいただければなお嬉しいのです。


お食事の進み具合が早い方と遅い方、それによっても、調理場に次ぎの料理の手配の仕方が変わります。

次ぎの料理を運ぶタイミング、飲み物をお奨めするタイミング。

お客様の発しているサインに、呼ばれなくてもいち早く気づける能力。



私も配膳はまだまだ力不足ですが、


「たかが配膳、されど配膳」です。

新しい職場をみつけたような、そんな気持ちでいます。



私は足が悪いので、一緒に働く係や調理場の人達、台所の担当にも、ある程度迷惑を掛けています。

その点では申し訳無く、感謝も忘れないようにしたいと思います。

それでも接客の仕事は最高だと思う私です。



宿の仕事はとにかく職種として多岐にわたっていることが、私にとってはありがたいことだなと思います。

一つの会社に入社して、こんなにいろんなことが出来る仕事も少ないのではないでしょうか。



食事処にいらっしゃるお客様と何回もお話が出来るので、

内容の濃いお手紙も書ける。


もちろん全員のお客さまと心がつなげるわけではないですが、新しい楽しみを発見して嬉々としています。



おなじみ様からは、


「おかみさん生き生きしちゃってますね」と言われていますが、

自分でもそうだなと思います。



このお客様とは「出逢い」だと感じる、そういうお客様を、日1日増やしていくんだと、今は燃えています。



いつか商売繁盛に繋がりますように。




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◆素顔の女将◆
日本最大の書道展・毎日展に、今年も女将の書が入選した。

5年連続だが、今年は自信がなかったとか。

確かに傍で見ていても、途中からパワーダウンしたような感じがあり、
ちょっと心配していたが、今年も入選してよかったぁ~(^-^)


問題は作品自体が毎回大きいので、
入選作を館内に飾るスペースが無くなってきた事。

こればっかりはねぇ.....。


(by aruji)

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