伊豆旅行記
紋屋は今年で創業81年目を迎えました。
早く新築の建物にしたいのは山々ですが、今の不景気に大きな投資は難しく、いま出来る事をしようとしています。
取りあえずは、紋屋のように古い建物で営業している宿を捜し、参考に出来る事を見つけようと、今回は伊豆のとある宿に行ってきました。
目的はハードにおける工夫の視察だったのですが、残念ながら特別参考にはなりませんでした。
そこの宿はJ○Bで85点以上の宿となっていましたが、少し驚くような実状がありました。
他の宿の悪口を書きたいわけではない点だけは、最初にお断りさせていただきますので、どうか誤解なさらずにお読み下さい。
ロビーや外観からは、確かに古さを感じさせる宿。
でも清掃は何処もピカピカに磨かれていて、本当に気持ち良く感じました。
古い宿でありながら、私達が泊まった棟は古い感じに新しく建てた棟で、バリアフリーに気を遣っている点は素晴らしいと思いました。
古い棟にある大風呂の他に、新しい棟にはかなり個性のある2つの露天風呂があり、なかなか趣が有りました。
文学に関する本や芸術(絵手紙講座)にも関心を持っているようでしたし、季節によってミニコンサートも開いている様子でした。
ロビーにあるどっしりとした大きなテーブルの上には、季節を感じさせるほおずきや大きな野菜が飾られ、それも雰囲気を醸し出していました。
しかし特に期待していなかったおもてなしが、余りにもひどかったのです。
到着すると、番頭さん兼、内務さんの男性が笑顔もなく出迎えました。
館内案内をしてはくれるのですが、例えば、
 番頭さん:「朝食は8時からです」
 私 :「何時までですか?」
 番頭さん:「何時までって、8時からです」という答え。
8時になったら何がなんでも食べなくちゃいけないのでしょうか?
お茶を出しに来たお部屋係も、こちらが番頭さんと会話しているのに大きな声で「いらっしゃいませ-」
何か嫌な予感がしました。
係が他の人だったらチップをあげようね、と相談したのですが、係はその人でした。
主人がお風呂から戻って来ないうちに夕食の時間となりました。
私が紋屋でお客様のお部屋にご挨拶に行くと、隣同士に並んで一緒にTVを見ている御夫婦やカップルがいつも何組かは有り、仲睦まじく見えて良いなぁと思っていたので、私達もそのように並びたいとその客室係に言ったところ、
 客室係:「うちにはうちのルールってもんがあるんですよ、お客
さん。 うちの皿はみんな大きいもんですから、横じゃ
並ばないんですよ。向かい合って座ってもらいます。う
ちのルールに従って下さいよ。」
余りの事に初めびっくりして黙止していましたが、
 私 :「でも、どういう風に座るかはお客の勝手なんじゃな
い?」
と言うと、
 客室係:「あ、そう!じゃ、そうしましょうよ。すいませんねぇ。
 うちの皿は大きいって言ってんのに」と言って、
着物姿が台無しになるくらいパタパタ飛び跳ねるように走って、立ったまま皿を並べます。
ところが主人がお風呂から帰ってくると急に猫撫で声を出して、
「あ-ら、旦那さんお帰りなさい。お風呂どうでしたぁ~?」
その態度のひっくり返り方にもびっくりしてしまい、もう絶対にチップなんてあげないと決めました。
後出しの焼き物と揚げ物のうち鮎の塩焼きは完全に冷えていましたし、肉の陶板焼きは初めから火を付けてしまうので、早々に食べなくちゃいけません。
1泊2万円以上の料金なのに、紋屋では遥かに下のランクで出しているものと同じ品が出て、がっかりしてしまいました。
朝は朝で朝食会場に行くと、別の係がコンセントと抜いたご飯の炊飯ジャーをそのまま持ってきて、「お願いします」と置いて行きます。
さすがにこれにはびっくりして、主人と目を見合わせてしまいました。
後から件の係は私服で現われましたが、炊飯ジャーがあっても気付きません。
器も7ヶ所も8ヶ所も欠けていて、食欲も失せてしまいました。
部屋にはミネラルウォーターがなかったので、薬を飲もうと売店に寄りました。
経営者らしい男性が出てきました。
一応まともな応対だったのですが、私がおつりをしまわない内に
「有難うございました」と言うと中へ入ってしまいました。
忙しいのかなと思ったのですが、暖簾からは髪にドライヤーをかけている姿が透けて見えてしまいました。
他の経営者もフロント回りをうろうろしていても、声掛け一つないのです。
この経営者達では、社員があんな風になってしまっても仕方ないのかと、つくづく考えさせられました。
紋屋もこんなにひどい人はいないとしても、余り良い点をあげられない従業員はいるかもしれないね、と主人と心配になってきました。
帰ったら早く個人面談の相談をしなくちゃね、と話し合いました。
それにしても、私達は別に他の宿にケチを付けに行った訳でも、どんなおもてなしをしているか探りに行った訳でもなかったのです。
J○Bアンケート85点以上の宿なら、きっとそこそこのおもてなしはしているだろう。
建物も工夫が施されているのだろうと思っただけなのです。
一般のお客様の評価はいったい何なのだろう。
お風呂や客室が良ければ、それだけで85点なのかしらと悲しくなってしまいました。
これから、こうした景気の中でも紋屋のファンを増やすために、様々な取り組みをして行こうと考えていたので、余計にショックは大きかったのです。
でも紋屋にお越しくださるお客様の中にも、「伊豆の宿はもっと高い料金を払っても、紋屋のような料理は出た事が無い。接遇もひどい」という話しは多く聞かれます。
やはり努力しなくてもお客様がたくさん来る温泉地では、基本的な接客の心を忘れてしまっているのかもしれないと思いました。
房総も昔は、ツァーでたくさんのお客様が訪れ、毎日満室だった事もあったそうです。
そういう時は、つい中身の濃いおもてなしよりもお客様をこなそうとする方が強くなってしまい勝ちです。
そうした事の積み重ねが、今の房総にお客様が来なくなった一つの原因を作ってしまったかもしれないと思います。
今回、研修で九州に行ったのですが、そのバスの中で、かの有名な加賀屋さんのビデオを見ました。
加賀屋さんでは、宿側の手順を優先しない、お客様の気持ちに従うという接客姿勢がうたわれていました。
紋屋は、加賀屋さんのように料理を運ぶ自動搬送システムもありません。
ものすごく重労働です。
ですから同じように考えるわけには行かないとしても、つい、客室係が楽なように考え過ぎて、お客様を優先しない事もありがちです。
充分に検討し直す事が必要だと考えました。
女性は意外と女性客が苦手です。
私のように接客に点が辛い客は嫌われ者です。
でも私の心をしっかり掴むベテラン接客員のいる宿や店だってあるのです。
私も、そうしたベテラン達に負けにように、老若男女から好かれる女将になりたいと思います。
私は今、夏の疲れが取れないうちに出張が続き、体調を崩してしまったのですが、お客様にお会いする事が出来ないというのも辛いものです。
早く良くなって、お客様に飛びっきりの笑顔を振り撒きたい。
心からそう思います。
いつか、そうした心が段段にお客様に浸透して、紋屋にお越しくださるお客様のために、立派な宿として生まれ変われる日が来る事を願いながら.....。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
家内は回転寿司に行くと目が回るという。そんなに真剣に見なくてもよさそうなもんだが.....。 (by aruji)

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