◇ 変わるもの変わらないもの ◇
今までにも何度も料理の撮影は行われ、何度か私も見学しましたが、今回お願いした料理撮影は、今までと全く違う形で行われました。


まず、時間です。

朝7時ころ東京を出られて、撮影の方々がこちらについたのが、10時前だったと思います。

普通、料理撮影自体は物にも寄りますが、2~3時間で終了します。
ところが、今回は夜までかかると言うのです。

通常は、調理場が作った料理が1セットあればいいのですが、材料が3倍くらい必要だと突然言われて、しびれました。

特に鍋料理の撮影は煮炊きするので、その間に材料が減って見栄えがしなくなると言うのです。

確かに煮炊きすると、材料の水分がぬけて小さくなって行きます。
1カットでなかなか美味しそうに撮れないのもうなずけます。



今回、特にいつもと大きく違った点は、フードスタイリストが同行していたことです。

かなりなお値段がかかるそのスタイリスト。
今回は特別お試し価格でお願いしてのことです。

特別お試し価格でない場合は、材料のカットから全てその方が行うそうです。


まず、スタイリストの小道具がすごい!

石、面棒、さまざまな形大きさに切られた材木、
ハサミ、包丁、各種刷毛類、剣山、スプレー、
計量カップ、等など。

撮影の前にスタイリストが料理の完成度を高め、それからカメラマンの方が、光りの調節・カメラの高さ・廻りのレフ板の位置・高さ・距離等を調節します。

そして今回のカメラマンは、パソコン画面で確認しながら全ての工程を行っていきます。

シャッターは、カメラのシャッターを押すときもあれば、パソコンの動作できるときもあります。


「これでいかがですか?」ときかれて、私が「少し平面的ですね」というと、
すぐにカメラマンがスタイリストに指令を出し、野菜の角度、鍋の中心の高さ調整などがはじまります。

実に興味深い作業でした。


カメラマンが
「こいつは、本当にスタイリストなんですよ。でも味つけは出来ないよな。」
と言うと、スタイリストは、
「ちゃんと美味しい料理は、一通り出来ますよ。」と言い返していました。


材料の多い鍋や舟盛りは特に時間がかかり、
高さの微調整
材料の並びの角度
ミリ単位での材料移動 など
端で見ているだけで肩がこりそうではありました。

カメラマンが
「必ず売れる写真でないと、僕らは仕事がなくなっちゃうんですよ。」
とおっしゃっていました。

真剣勝負ですね。



スタイリストはまだかなり若い男性ですが、料理人とはかなり違うセンスを磨いているように思えました。

手の動き一つ一つ、美的感覚の料理さばきとでもいうような、見事さがありました。


私は、もっと普通の料理撮影とは違うカットや、もっと非常識的、前衛的に本当はしたかったのですが、プロを前にあまり口出し出来ないのが少し残念でした。


ただ、映像はすごく綺麗です。
ホームページに載せるにしても葉書に使うにも、
非常にクリーンな写真でお見せできると思います。



今回の撮影で、私が一番感心したのはフードスタイリストさん。

紋屋の調理場の若い衆にも、是非その仕事ぶりをみて勉強して欲しいなと思いました。


料理はやはり芸術です。
常に感性を磨いて、一つ一つの料理の完成度を高め、
一つの料理の仕上げに情熱を注いでほしい。


現実は、思うようにはなかなか行きません。




私も以前百貨店にいた時、ショーケースの中のディスプレイを頻繁に変更していました。

ほんの少し角度が違うだけでも、
見え方がものすごく違うことにいつも驚き、
悩みながら行っていました。



また、書道で近代詩を書くうえでも、全部の字が同じ大きさにそろいすぎると、良い作品になりません。



全体の構成、かすれやにじみ、字体の組み合わせかた、
一つの字のどこに空間をつくるか、
線の太さを一定にしないなど、常に考えます。

そうした積み重ねが良い作品となっていくのです。



今回の料理撮影は、非常に楽しく貴重な時間でした。

時代と共に、ホームページのあり方や、使われる写真の傾向、全てがかわっていきます。毎日が勉強です。

ひとときも立ち止まることが出来ない現実は厳しいですね。

宿が何を発信していくのか、経験を積みながら、見極めていく力。
難しい世の中だからこそ、余計に「とがった感性」が必要な気がします。


毎日が同じことの繰り返しにならない。日々すこしづつでも進化する。
本当は、つい同じことの繰り返しになってしまっているもの。

今日は昨日より、いつもよりよいお迎えが出来たか、
料理説明が昨日より進化したか、器の置き方が美しいか、
楽しい会話を引き出せたか、
最近、新しいサービスを追加したか、
お茶菓子は今のままで良いのか。

小さなことでもあげていけばきりがありません。



これからも常に新しい感性磨きに力をいれます。

ちょっと変わった情報がありましたら、是非お教えください。


--------------------------------------------------------------------------------
◆素顔の女将◆
家内のお母さんに、痴呆の兆候が出ているらしい。

実家のお姉さんから話しを聞き、暗澹たる気持ちになって帰って来た家内。
電話ではすごく普通だったそうで、それが余計に悲しくなったと言う。

そろそろ、そういう立場の年頃になった私達.....

(by aruji)

ご予約・プラン紹介はこちら