◇ おめでとう ◇
紋屋は決して新しい施設ではありません。お風呂も広くはありません。
駐車場も狭いし、旧式なお部屋もあります。

それはホームページに、「お許し下さい」というページを設けて、お客様にも開示してあります。


でも、なぜか紋屋に「はまって」くださるお客様がいらっしゃる。
もう4回もお越しになれば「はまっている」と表現しても良いでしょう。


最近では、やはり小さいお子様連れには圧倒的に人気ですが、比較的落ち着いた雰囲気のご夫婦様にも、強烈なファンになってくださるお客様があります。

そのほとんどが「はまる」きっかけとして、紋屋に流れている雰囲気と、人のぬくもりに懐かしさに似た感情を覚えるからなのではと、このごろ思います。



以前から私も、紋屋では「ほっ」としていただきたいなと、いつも思っていました。


私達にとって、最近すっかり慣れっこになっているのですが、先日ある業界関係の方から

「それはすごいことです。普通ありえません」と

言われたことがあります。


1日にご慶事が5件も6件もある。割合普通の光景なのです。

お誕生日やご結婚記念日。
還暦、古希、喜寿などのご長寿。
また二つのお祝いを兼ねて、
もしくは3つのお祝いを兼ねてだったりする。

最も多いのが小さな赤ちゃん連れで、しかも、おじいちゃんおばあちゃんの還暦というおめでとう。

先日の11月21日は6組のお祝いのお客様がありましたが、紋屋は25室しかないのですから、やっぱり多いのでしょうね。


時々、定年退職や永年勤続、ご入学というときもありますが、おめでた(ご懐妊)記念や彼が日本に来て3年の記念日と言う珍しいケースもあります。

レアなケースですと、なかなか対応しきれないことも無くはありませんが、どちらにしても、お越しになるお客さまと従業員が一体となって、館内におめでたい温かい雰囲気が充満する、そう言うムードがあります。


何にしても、「おめでとう」はいいものです。

サービス業は、温かな笑顔が当たり前だと私も思っておりましたが、意外と今はそうじゃないのです。

先日、ある薬局で栄養補助の錠剤を買い、
それをかばんのなかにしまおうとしていました。

カウンターの中にいた女性は、
次ぎのお客さんに頼まれたものを取りに
カウンターから出たかったのでしょう。

それに気がつかなかった私もいけないのですが、その店員は「取りに行きたいものがあるんでどいてください」と言ったのです。

しかも視線まで「あなた、何やっているの?」と言う感じで、驚きました。

「お客様、恐れ入りますが、すこし、場所を空けていただいてよろしいですか?」が普通です。


まあ、薬局程度の接客だから仕方が無いのかなと思いますが、最近では、あるホテルでも、丸いテーブルで、紅茶に入れるミルクを取ろうとしたら、「お客様、ミルクは右回りです」と言われた事がありました。

右に回したら、今必要な私が一番最後になってしまうのに。


これはきいた話ですが、やはりあるホテルで、ひじを突いているお客様がいて、それがサービスするのに差し障りが合ったのでしょう、そこのホテルマンが「お客さん、ひじ」と叫んだそうです。

全くどうなってしまっているのでしょうね。


マニュアル的でない、
心温まるおもてなしを教育などの手によるものではなく、
紋屋に来たら仏頂面の人も自然に笑顔になる。

そんな宿でいたいと思います。


そうしたことが、長い年月この宿に染み込んでいて、きっとあたたかな雰囲気が全体に流れているのかも知れません。


スタッフみんなで驚くほどお祝い事を盛り上げてくれるという、有名なあるレストランに以前行きましたが、それがすごくマニュアル化されすぎていて、全然心がこもっていないと感じたことがありました。

そのレストランでは、
「○○をつけるとプラス1000円、
こちらもプラスするとさらに2000円」などとセールスする。

お金を払いたくないのではなく、
プラス料金より気持ちなんじゃないかなと思うのです。

お金を払えば、もっと感激するようなことがたくさん待っているわけではない。

そんな気がしませんか?


私達は、マニュアルでやっているのではなく、自分の精一杯の気持ちでやっているのでよくもらい泣きもするし、一緒になって写真に入るし、自然にカメラも頼まれなくてもシャッターを押す。


喜んでいただきたい精一杯の気持ちでこそ、
お客様は感動なさるのでは? 

本当に喜んでいただきたいの一心。

だから、やっていることはたいしたことではないけれど、とても手のかかる作業ばかり。

でも、楽しいですね。



昨日、入籍済みですが結婚式の1ヶ月前と言うご夫婦様がお越しになりました。

とてもういういしいそのお二人。

ご主人様は、本当に素晴らしい満面笑顔、奥様はとてもかわいらしい女性でした。

もともとご慶事の内容が流れていたので、どの係もおめでとうございますを言います。


おめでとうは何度言われても嬉しいもの。


結婚式の前はお忙しいものなので、きっとちょっと息抜きにいらしたのか、それとも新婚旅行に行く暇が無いのか。

ちっとも新しくない紋屋を、ういういしいお二人がどうして選んでくださったのか。

選んでいただけた事がとても嬉しかったのです。


何をお話しても、漂うおめでたい空気。

お料理一つ一つもとても楽しんで召し上がられ、その笑顔がお二人の幸せを十分感じさせてくれます。


それでも、結婚は決して楽しいことばかりではない。

だからこそこのお二人には、きっと頑張って素晴らしいご家庭を築いていただきたいと願いました。


大変お喜び頂いて、

「本当に嬉しくて、目頭が熱くなりました。
本当に本当に嬉しさでいっぱいです。
今日紋屋に宿泊できて、楽しかったです。
ありがとうございました」とご感想に書いてありました。


私も、ご結婚なさる方にいつも差し上げているメッセージがあり、それを手渡しながら、紋屋にお越し頂いたことに感激し、涙が出てきました。



また、もうお一組は、ダイヤモンド婚式とご長寿のお祝いでした。

おじい様はあまりお話をなさらないのですが、
ご長寿を祝う文言に表情が崩れそう。

長い間に、いろいろありましたね。

頑張ってこられたのだと思いました。


その様子に若夫婦様も「もう1泊だ!」と叫んでいらっしゃいました。

一生懸命お祝いしていると、お客さまのお心も満たされる。

それを見て私達も満たされる。


お祝いは、本当にいいものです。



これからも、お客様といっしょに笑顔になる紋屋で、ずっとずっといたいと思います。これだけは、きっと一生変わらない。


“お客様を笑顔にするために生まれてきた。”


私がこの世に生まれてきた、たったひとつの理由なんじゃないかと。

(そうだったら嬉しいな)



世の中が苦しくて、まるで悲しい空気ばかりのこのごろのニュース。

来年は、少しでも、笑顔を増やしていきたいですね。




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◆素顔の女将◆
私達の結婚記念日は10/22。今年は特にお祝いもせず、その日を迎えた。

当日の人事配置では、東京から帰ってくる家内を館山まで迎えに行けなかった
のだが、せっかくなので家内の好きなイタリアンレストランで食事をしようと、 急遽シフトを替え迎えに行った。

帰ってきた家内に「食事に行こう」と誘ったが、事前に家内に伝えていなかっ
たので、東京で食べてきたと言う。おやおや残念! と思ったところ、家内は家内で、お祝いのケーキを買ってきたという。

なんだか、O・ヘンリーの「賢者の贈り物」みたいな私達 ♪~

(by aruji)

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