◇ 予約が1年先まで取れない宿 ◇
社長と再婚したばかりの頃、社長から
予約が1年先まで取れない宿として有名な、
ある秘湯の宿の話しを聞いたことがあります。


それは、とても忘れられない話でした。
まだ旅館に勤める人間になりきっていなかった頃なのにです。

今回、その宿に研修に行く機会を得ました。
今ではその宿は秘湯の宿などではなく、立派な高級宿になりました。


でもそれは、そのお宿の社長が、高級宿にしたいと願ったのではないのです。


自然と調和し、夜空の星のきらめきを望み、
そうした空間で、家族の絆を高められるような宿にしようとした
結果がそうなったのです。


そして、その中で働く人たちに対しても、

家族や友人と親しめる環境を作ろうと
「お正月やクリスマスイブは休み」としたそうです。


なんともうらやましい話ですが、お休みがうんぬんというよりも、それだけ従業員を思う社長だから、みんなが生き生きと働けるのだろうと思いました。

最初に聞いたとき、
お宿の従業員さんの笑顔が忘れられないくらい、
みんなこぼれるような笑顔だと言う話でした。


実際行ってみて、私も圧倒されるくらい皆さんが素晴らしい笑顔でした。
特に男性従業員さんたちの笑顔が跳びぬけて素晴らしい。

男性従業員さんたちは、いつもお休みを返上して、休館日は社長と一緒にきこりをしているそうなのです。

戸外の遊歩道をつくったり、
樹木を切って、雪止めをつくったり。

男性陣は、調理人も含めて全員参加するそうです。

その調理場の方々も朝食時に会いましたが、他の男性陣に負けないくらい笑顔。


18室の旅館なのに、従業員さんは60数名もいる。

私たち客が通ると、作業をしていた従業員さんたちは、くもの子を散らすように、さぁーっと私達客に道をあけてくれる。
しかもすごいさわやかな笑顔で。


お世話になっていることに、
こちらが感謝してしまうくらい、
笑顔を返さずにいられないくらい、
どこもかしこも笑顔の気持ちいい空気。

施設も、ものすごい特徴ある洞窟風呂があります。
混浴ということでとてもどきどきしていたのですが、ものすごく快適。

うすぐらいその洞窟風呂。
床には砂利が敷き詰めてあり、かなりぬるいお湯。

その洞窟風呂に入る前に少し熱めの内風呂であったまり、それからその洞窟風呂に入ります。

1時間でも2時間でも入っていられる快適さ。
素晴らしいお風呂でした。
そのほかにも、2つの露天つきの貸切風呂や家族風呂。


廊下のあちらこちらにお客様が部屋以外に寛げる空間があり、何日でも、お金があれば日常を忘れていたくなってしまう。


そんな宿です。


ホームページもなく、あくせく集客に頭を悩ませる必要もない。
1 度訪れたらきっと忘れられない。
全世界から話しを聞いた人達が集まって来る宿。



そのお宿の社長様のお話を聞いて質問もしたのですが、やっぱり核心はわからない。


最初は、誰も来ないような寂しい宿だったそうです。
1歩1歩努力を重ねて、今になった。


でもその1歩1歩は、
その他の宿とどう基本的に違っていたのでしょう?


もしかしたらと思うことはあるのですが、それが本当にそうなのか、又本当だったとしたら、どのように実践したら良いのか...

今悩んでいます。


恐らく繁盛宿は、お客様に対しても従業員に対しても優しい宿にちがいありません。



紋屋も、お客様の為にそして従業員のために、お食事処を何年もかけて造りました。

すべて手運びで4階までお部屋だししていたのを少しずつ減らし、働く側にとっても、大分労働力は減ったはずです。

でもまだまだ従業員への配慮は足りない。

理想はあっても、現実はなかなか厳しい。


そのお宿の社長も、

『給与が高ければ必ずしも満足するわけではない。
休みがいっぱいあっても、遣り甲斐があるとは限らない。』

とおっしゃっていました。



気持ちはあっても、なかなか給与が上げられない。
休みもなかなかあげられない。
心ひとつになって、皆がいきいき出来る労働環境造りはどうしたらよいのか。


そのお宿の社長は、

『従業員が社会的に科学的に理解できる経営理念を作り上げ、
それを分かりやすく人間的に説明しつづけること』

とおっしゃっていました。

そこのお宿の経営理念は

「我々は、日本風土にあった独自固有の理想土(ふるさと)文化の創造を企業使命とし、社会に貢献し、人格の練磨向上をはかり、事業の限りない成長と社員の幸福の実現に邁進する」

というものです。
なにかと陰で仲間の悪口を言い、相手を変えては愚痴をこぼす。
それでは、会社がそしてその人の人格が向上するはずもないですね。
そこのお宿の主体的当事者行動指針は、

何時も合わせて行こう
かげでこそこそしないで行こう
なんでも何故?と考えよう
いつでももっといい方法はないかと探そう
人の役に立てる人間になろう

というもの。

そうだ、それこそが私が求めているものだ!


会社を楽しくするためにお客様に喜ばれ、
喜ばれるような接客をしたことを会社が認め、
誉めつづけ感謝する。
誉められた人も、それを誇りに思い向上心に目覚めていく。
そして仲間達もその人を必要とし、
自分もそうなるように努めていく。

そうでありたい。

私が育った環境は、全く誉めることがない家庭でした。

だからこそ、会社では最初出来なくても、
出来るようになったら誉めよう。
そして感謝しよう。
出来るようになるまでは、温かく見守ろう。

そうした小さな努力の集大成が、集客の必要がない現実を産んだのですね。

素晴らしいことです。


働くみんながこころ一つにして
生きがいある仕事場にするために、
私達が今しなければならないことを考えぬいていこう。

そう思った今回の研修旅行でした。

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◆素顔の女将◆
今回は、ある旅行社の協定旅館連盟が主催する研修旅行で、いつもはせいぜい20名程度の参加者だが、今回はなんと50名もの参加!

参加されたある宿の女将さんなど、
「私が生きている間には、泊まりに来れないだろうと思っていました」
とまでおっしゃっていた。

社長の講演の後、質疑応答があり家内が質問したところ、自分の今までの苦労を踏まえた質問だったせいか、中にはご自分の苦労とオーバーラップし、目頭を押えていた女将さんもいた。

どこの女将さんも悩みながら、悪戦苦闘しているんだなぁ~


(by aruji)

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