◇ 「無い、無い」を「ある、ある」に ◇
紋屋は、ご存知のとおりエレベーターが館内にございません。

お客様の中には、

「今時、エレベーターないの?」とおっしゃる方もありますが、結構日本中エレベーターがない施設は多くあります。


紋屋の場合は構造上、今の状態では付けられないため無いのですが、正直、働いている人たちも私もみんな、あちこちが痛くなりながらの労働です。

ご年配のお客様や、多少脚が悪そうなお客様をお見受けすると、大変申し訳無い気持ちになります。

それでも、私共にエレベーターが無いことをご存知の上で、ハンディキャップがあっても、お越しになるお客様もいらっしゃいます。

電話の場合は、お風呂の場所やお食事の場所、
お風呂に手すりが無いことなど詳しくご説明し、
ご相談させていただきながら、
それでもよろしければと言う形でご予約頂きます。


脚が悪いだけでなく、ご年配また妊婦さんなども出来る範囲で気遣いたい。


でも、紋屋は元気なお客様でないと進んでお勧めできないと、今までずっと思ってきました。



紋屋の大風呂は今までは3つあり、そのうち2つはそう広くありません。

特に、ひのきのお風呂は、家族で入るのに兆度いいくらい大きさですが、パブリックには、あまりふさわしくない広さなのです。

展望風呂もそれほど広くないので、ヒノキのお風呂でもどうぞ、ということで、むりやりパブリックのお風呂にさせていただいていたのです。


嫁にきた頃から、そのことも気になることの一つでした。


貸し切り風呂は、赤ちゃんプランをはじめてから、かなりの確率でいつもいっぱいな状態ですが、3階にあります。

2階から3階に上がる階段は、かなり急勾配です。


ピンクリボンのお客様や妊婦さん、
脚が悪く介添えが必要なお客様が、
無理なく安心して入れるお風呂が欲しい。

こころからそう思いました。


先日、ネット予約の日系ブラジル人で、お母様がかなり脚の悪いお客様ご一家がお越しになりました。

その日は満室。

お部屋の交換も出来ません。

お母様は自力で2階のお部屋に行くことも出来ず、他の皆様がお部屋に入ってからしばらくして、ご家族に背負われてお部屋に入られました。


もっとも大変なのが、ご入浴。


そのお客様のお部屋からですと、1度3階まで上がり、もう一度2階まで下がったお風呂に行かなければなりません。

もしくは20時半を待って、男女別の入れ替わった1階のお風呂に入るかしかありません。

それにしてもお母様を背負えるのは、若いご主人様だけだと思えました。


そこで、以前から考えていたことを実施しました。


1階のヒノキのお風呂を家族風呂にしてしまうことです。

とりあえず、その日は21時から、他のお客様には申し訳無かったのですが、 檜のお風呂は故障中ということにして、そのご家族さまにお入りいただいたのです。

ご家族様で、キャーキャー言いながら、楽しくお入りになられたご様子でした。


また、最近昔の雑誌をご覧になって、半身に麻痺があるご夫婦様がお越しになられました。

お電話は私が承りましたので、かなり詳しく館内のご説明はさせていただきました。

よくお考えになってキャンセルなさっても構いませんよ、とまで申し上げました。


お越しになられてからは、想像したよりずっとお元気なご様子でした。
車椅子などもご利用なく、普通の早さで歩かれます。

お食事のときにお話を伺ってみると、ご主人様が電気工事のお仕事で、高い場所から落下なさったそうです。

しかもその事故は、まだ4ヶ月前。

よくご旅行にお越しになるまでに回復なさったものだと、感心しました。


この4ヶ月にいたるまでの苦悩や病との闘い、
生きていこうとする気力の喪失からの脱却、
きっととても大変だったろうと想像できました。

ご主人様は麻痺があってもゆっくりとならお話も出来、今までの経緯、今の心境などをお話下さいました。


まだ、列車やバスなどは乗ったことはなく、事故以来、今回はじめての外出だそうです。

ご自分の体が悪くなってから、自分以外にも多くの人たちが、何らかのハンディーキャップを背負って生きているのだと知ったそうです。


そう言う人たちばかりに目が行く。
脚が悪い私もそうでした。
実際に体が悪くなるまでは、気がつかないことが多くあるのです。

そうしたことに気がつけただけでも、この経験は無駄ではないと思った話を、私もさせていただきました。


お互いに、「そう、そう!」と思って実感することばかりで、辛さも身にしみて、よくうちに来てくださったと涙が出ました。


このご夫婦様に合わせて、
その日から1階のヒノキのお風呂は、
貸切制の無料家族風呂にしました。
そのご主人様の為に、高めの椅子もご用意しました。

限られたスペース。限られた資金。
限られたサービスの中にも、必ず抜け道はあるもの。


贅沢を言えるほど、紋屋は新しい施設ではないですし、
何でも承れるほど、余裕もありませんが、
無いものは、そこに出来る方法を考え尽くすことが肝要。

そう思えました。



ある旅館さんの社長が、

「何も無いない、ではなく、あるあるに替えていくことが大事だ」と、おっしゃっていたことを思い出しました。まさにそのとおり。

無い、無いと思っていては、いけないのだと思います。




以前は、館内に洗濯機が無い、飲み物の販売機がないと、頻繁にアンケートに書かれていました。

それぞれ置く場所が無いとずっと思ってきたのですが、本当はあったのです。


もちろんかなり考えて、やっと作った場所ではありますが、「無い、出来ない」から考えては、何も前に進みません。

全てのことに、すぐ対応できるわけではありませんが、マイナス思考は良くありませんね。


ホームパージのお許し下さいにあるとおり、紋屋には

狭い駐車場
広くないお風呂
旧式な部屋もある
エレベーター無し など

いろいろデメリットがあり、それを表示しています。


よくいろんな方から
「(ホームページは)ここまで謙遜する必要は無い」といわれます。

その通りなのでしょうね。

でも、こちらはつい施設は古いし、エレベーターはないしと考えてしまう。
確かに、十分な施設ではないけれど、旅の思い出作りは施設で決まるものでもありません。

大事なのは、お迎えする心


これからは、なるべく「無いこと」を「あること」に替えていき、少しでも胸を晴れるように努力していきたいと思います。


見守ってくだいませ。




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◆素顔の女将◆

家自宅に帰って着替えるためにズボンを脱ぐと、
古くなって磨耗したためか、私のパンツに大きな穴が空いていた。

それを見た家内は、「エキゾチックねぇ♪~」と大喜び!
あの~、それって「エロチック」じゃないですか?


(エキゾチック:異国情緒があること)
 
(by aruji)

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