挨拶の意味
以前に「女将の挨拶」を書いたところ、ものすごく反響があり、それはそれは沢山のメールを頂戴しました。中に2通反対意見があり、とてもショックで4ヶ月くらい気持ちが落ち込んでしまい、自分自身気持ちのいいご挨拶が出来なくなってしまったこともありました。その後、何とか気を持ちなおし、10ヶ月の月日が流れ、今は自分の中でしっかりしたご挨拶へのポリシーを持つことが出来るようになりました。勘違いをしていただきたくないのは、他の宿の中には、女将が自分をスターのように思い、お客様が食事をしているところへ、突然ふすまが左右にパッと開き、大音響と共に女将が現れる(笑)というような宿もあると何かで読みましたが、私はそんな考えは持っていないと言うことです。女将が挨拶して、喜んで下さるお客様もいらっしゃいますが、無くても良いと思う方も沢山いらっしゃるという事は、ちゃんと知っているべきです。女将はご挨拶に行って差し上げている訳ではなく、ご挨拶させていただいているのです。ですから、どう見てもこのお客様はご夫婦でないらしいと思えたお客様や二人だけ、ご家族だけの特別な時間を作りたいお客様へは、なるべく放っておいて差し上げたいので、お邪魔しないようにしています。また、若いコンパニオンとただ騒ぎたいだけのお客様や、私がご挨拶に伺うと違和感を感じると直感できるお客様へは、お伺いすることをご遠慮申し上げています。
私は、お客様がくつろいでお過ごしいただけているか、何かご不便はないか、そして気持ちが通じ合えるお客様との巡り合いを願って、伺っています。特にお客様が本当にご満足して下さっているかは、表情を拝見していてよくわかります。また、このお客様はきっとまた来て下さるだろうと思えるお客様の事は、自分のノートに日付、部屋、係り、エピソード等を記入しておきます。ご挨拶に伺ったお客様は、だいたい部屋とセットで記憶されます。何度もお越し下されば、この時はどんなお料理をお出ししたか等に付いてメモを残します。細かい心配りは、やはり女将の仕事です。お客様の動きや、その過ごし方を拝見させていただいたり、直接ご意見を頂戴することで、随分と宿づくりするべき方向性も掴めます。実際にそれを見ないと、宿の経営側が勝手にその方がよろしかろうと判断し、お客様をがっかりさせることもあり得るのです。アンケートはごく一部のお客様しかお書きになりません。そのアンケートだけを拾っていても、お客様の心をキャッチすることは難しいのです。
本当は、ご到着時にゆっくりお抹茶でも差し上げながらお話をして、お部屋に伺わない方がもっと良いかも知れないとも思っています。もしくは食事処があれば、その食事処へ伺うのも良い案です。でも紋屋には、お抹茶を差し上げるスペースも、食事処もないので、仕方なくお部屋へ伺っています。私がご挨拶をし始めてもう一年以上が経過したので、再度のお客様を調べる時、その日の宿泊者一覧表を見れば、大概は思いだせます。やはりその意味では、ご挨拶は重要な部分はあると思います。中には、そこからいろんなお話を伺って、お互いの間に信頼関係が生まれ、顧客様になっていただける場合もあり、それはそれは本当に嬉しい限りです。
またクレームがあった場合も、経営側が頭を下げるという重要な意味があります。最近では宿内のいろいろなこと(調度品、アメニティ、料理など)に関わっているため、自分が一つ一つ作り上げているという気持ちもありますし、その一つ一つに対しての思い入れがあるので、何かを聞かれてもきちんと説明が出来るのも嬉しいのです。何はともあれお客様によっては、客室係りには心を許さないが、女将には心を許す方もあれば、反対の方もあるので、お客様がご滞在中に何を思っているかを知る為の活動として、これからも続けていくつもりです。
しかし、絶対どの方にもするとか、そう決めるものではありません。いつまでも「お客様はこう考える」ということが理解できる、宿の経営側の考えに染まりきらない女将でありたいと思います。主人は、まだどうしても経営側の考えから出来れない部分があり、今日の101のお客様はこうおっしゃった。昨日の203のお客様も同じことをおっしゃっていた等と、アンケートには書かれていなくても、生の声を主人に伝えるのも大切な事です。毎日毎日、今日のお客様の話をしながら、家までの車中を過ごしています。そうしたことで、主人も今までよりずっとお客様のお声に敏感になり、フロントに寄せられる様々な情報を元に、客室係りや内務さん達にも指示を与える様になってきました。また、主人と私が常に話し合っている事を客室係り達に伝える。客室係り達のその時の反応を社長に伝える。と言うことで、また宿の潤滑油的な役割をしているようです。
ミーティング時に指示した事を、係り達がきちんと行ってくれているか見守ることも重要な役割です。襖の開け閉めに膝を付いてねと常々言っていても、忙しいとつい今までの癖で立ったまま出てくる。そこに私が立っていると、急にそこであわてて座る人もいる。部屋に入ったら、お客様のスリッパを揃えるようにと言っても、やってない人は必ずいて、やっていない場合は私が揃えてきます。チェックマンになると言うよりも、みんなの意識レベルの向上を計りたい。大声で廊下やパントリーで話さない、集まってしゃべらない等々、細かい注意はどうしても必要です。また紋屋では今、フロントにかかってくるお客様の注文や要望を、係りにポケットベルも持たせて連絡していますが、そのとき係りがどの部屋で何をしているかはフロントには判らない。そうした係りの動向への理解も、やはり女将が少しづつ解決していかなければなりません。フロントと係り達の考えの間の隔たりを、一番正当につなげられるのも女将の役。他の人だと、つい仲間意識から係りが楽なように、お客様の立場を無視したことが発生する恐れがあります。
以上のように、女将の挨拶は様々な役割があるのです。昨年一年は、私が女将らしくなる第一歩だったと思うのですが、やはり急激に私が宿づくりに自信を持って参入できたのは、挨拶のお陰かもしれません。最近、洗面所にもタオルが欲しい、トイレにもタオルが欲しい、もう一枚タオルが欲しいという声が多々聞かれ、主人と検討中です。ホテルの場合はどうか。他の宿の場合はどうか。紋屋では部屋によってはトイレにペーパータオルがあったり、色別のタオルがある部屋タイプもあります。タオル一枚、コップ一個の細かいリサーチ活動が今、地道に始まっているのです。そしてこうしたリサーチ活動から、一つ一つ選定して宿づくりに反映して行くと、それがまた、自分の自信へとつながっていきます。
今年はお正月早々に風邪をひき、鼻声でお化粧ハゲハゲのままお客様のところへ伺っています。体調が今ひとつでも、お客様の前にしていると元気が出る。私の元気は接客によって培われるのでしょうか?昨年は、本当に女将としての活動が本格的になった一年でした。今年は更にステップアップし、主人と宿づくりを着実に進めていきたいと思います。まだまだ当分は新米のままではありますが.....。こうして私がメールマガジンを執筆している事自体も、女将としての自覚を高める効果はあるのかもしれません。ご存知のように、初めから女将をやろうと思って紋屋に来たわけでも有りませんでしたし、何処まで出来るかは未知の問題だったわけです。日頃忙しい毎日が過ぎていく中で、この題材を書いてみようかと思い付く事、またその題材についてきちんとした文章にする事で、自分の中で仕事への明確な方向性が生まれているのかもしれません。皆様もこのメールマガジンに書いて欲しいと思うこと、こんな事が知りたいということ等がございましたら、どうかお寄せ下さい。お待ちしています。
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◆素顔の女将◆
東京に出掛けた家内から電話が有った。そこでこちらから「石坂浩二が、もう再婚したこと知ってる?」と聞くと、「えぇぇぇ-!!! 知らないぃぃぃ!!もう再婚しちゃったのぉ-!!! それはびっくりぃぃぃ-!!!」と大騒ぎ。更に続けて、「それよりもっと凄いニュースがあるんだよ! 近ツー(=近畿日本ツーリスト)と日旅(=日本旅行)が合併するって話し知ってる?」と聞くと、冷ややかに「知ってるわよ。今朝のニュースで見たもの」とほとんど興味が無い様子。どうやら家内には、近ツーと日旅の合併より石坂浩二の再婚の方が大問題らしい。(^_^;)(by aruji)●おまけの息子●
息子とテレビで格闘技のK-1の試合を見ていた時の会話
 息子 :「K-1って、いちゃもんがないから良いよね」
 aruji:「 ? ? ?.....何だそりゃ!?」
 息子 :「えっ? あっ、八百長だった!」
いくらなんでも、K-1に いちゃもん付ける勇気のある奴はいないだろう。(by aruji)

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