社員研修
私が紋屋に籍を置くようになって、一番驚いたことは、社内研修が全く行われていない事でした。私は、大手の百貨店に長いこと在籍していましたので、もちろん新人研修を経て、次は職場での研修が有ったものです。そして一年に一度、面接や論文提出、試験がありました。私はブランドの専従社員でしたから、そのブランドの会議やトレーニングは、嫌と言うほど経験してきました。またその他、店独自のセミナーも時々行われていて、その他、安い費用の自己啓発の為の活動も広く行える様に、システムが敷かれていました。
私が紋屋に来た初日、「自分で見てくれば」と言われて館内を歩き、それ以来、売店のレジ打ちや商品の受注以外は、何も教えてもらわずに全て自分で取り組み、疑問にぶつかっても、それを正しい形で教えられる人は、(結局教えられていない為)誰もいなかったので大変な苦労をしました。初めの半年は、とにかく回りの状況を見極める事に終始していましたが、段々とそれでは良くないと思い、少しづつ研修を取り入れようと試みました。社長は頻繁に各種のセミナーに顔を出し、知識が豊富。しかも大変な頭脳明晰な人です。何故それを従業員に伝授しないのか疑問でした。社長は、他の会社に勤務した経験が無いため、また自分自身が優秀な為、わからない事をわかりやすく教える方法を知りません。私はかなり面食らいました。
私が紋屋に来て1年を過ぎようとした頃、初めて行儀作法の研修会を開いてみました。しかし初めてのことに、反発も大きいものでした。何処の宿も膝をついて料理を出すのは当たり前であり、和室で立ったまま料理を出すところ等まずありえないのに、紋屋ではそれが当然の如く行われていました。「私達は忙しいし、次々と用事で呼ばれるからそんな事やってられない」と一人が言いだすと、みんな右へ習い。私もまだその頃は経験が浅かったので、そうした意見に対応することが出来ませんでした。何もしないよりは良かったに違いありませんが、そのままのやり方では思ったほどの成果を得られないことを思い知らされました。それからしばらくは、私自身が社外研修に時々出掛けて、紋屋に取り入れるべき研修の方法を探りました。そして私も女将として少しづつ成長し、従業員一人一人の性格や、皆が働いている現状での問題点を把握していきました。レールが何も敷かれていないところに、レールを敷くことは容易なことではありません。リーダーシップ研修やフォロワーシップ研修にも数回参加をして、社長とも様々話し合いを重ねました。紋屋がアロマを取り入れるにあたっては、セラピストを招き、全員にアロマを体験してもらったり、座学の研修も試みました。また外部講師を招いて講演会を開き、国内旅行の今迄の流れやこれからあるべき旅館の姿をお話頂きました。その上でフロントはフロント、ルームはルームの部門別の会議やトレーニングを施行して行くことを決めました。
旅館は毎日が忙しく、パタパタと過ぎて行くところです。そのトレーニングをするために、人事配置等をも考えなければなりません。何事にも従業員達は、「とてもやってられない」が日常語になっています。果たして本当にやってられないのでしょうか。やるためにはどうすればいいのかを、本当は考えなければならない筈です。手をこまねいてはいられません。忙しいので、つい大変な事を人間は避けようとするものです。でもお客様商売は、大変な事をしてこそ価値がある訳です。経営側は、従業員がなるべく楽に仕事が出来るようにする事も考えなくてはなりませんが、同時に大変な事にも取り組む姿勢を作らなくてはなりません。従業員も研修があることが当たり前になってしまえば、どうと言うことも無いのです。本来なら、無料で研修をさせてもらえるのですから、大変有難いことなのですが、私自身もそれが有り難い事であると理解したのは、百貨店を退職してからかもしれません。会社が成長するためには、働く人も一人一人がそれぞれの成長をしてもらい、疑問点は全員で解決して行くシステム作りを構築していく必要があります。戸惑いも反発も、今は気にしている暇は無いのです。社長と私が考え出す会社の進むべき道を、従業員それぞれに伝授して、団結して行くように導いていきたいと思います。こうして私が来てから、紋屋は大きな変革の時を迎えるようになったのです。でもそれは、世間ではごく当たり前のこと。やっと紋屋も当たり前の会社に成りつつあるということです。
今は、入社したら生涯、会社と人生を共にする時代ではありません。会社を背負って歩んできた人も、大きな成果を残してきた人も、給料が高くなれば飛ばされて減給になったり、わざと辞めていくように、部長だった人が急に駐車場の係員にされたり、通勤不可能と思えるような遠い場所へ転勤させられたりすることも、決して珍しくはありません。今は有能な若い世代を安く使う時代であり、用が済めばお払い箱。それが現実なのです。紋屋だってある意味では、余り優秀とは言えない人材や、私達の考えに付いてきてくれる気持ちの薄い人に、高い給料を払える余裕はないのです。一人一人に真剣になってもらう必要があります。しかしながら現実は、田舎の中小企業というところは、何となく働いている人の固まりなのが一般的といえます。会社の経営者にとって従業員は家族のようなもの。その人の抱える家庭上の問題等は、正直に言って、私達の胃の調子が悪くなることも少なくありません。でも情だけでは会社は経営していけない。人材は人財として育てて行かなければならないのです。先日も、新入社員研修に引率者として参加してきました。大変良いお話が聞けた研修でもありました。「これからの時代は、頭が良い人は会社に必要無い。頭が良いのではなく、頭を使える人になれ。」「これからは、想像力と創造力のある人が大切な時代。また会社の問題点にきちんと疑問をぶつけて行かないと、雪印のような会社に成りかねない」というお話もありました。
有名な松下幸之助氏も船井幸雄氏も、また今回の研修の守谷雄司先生も素直さと勤勉さをうたっていました。大企業の社長の話しは抽象的な話しが多いそうですが、私達は中小企業の経営者。直にしかも現実に根ざした指導を施して行ける幸せ者でもあります。どこの会社も基本は同じ。改めて私自身も初心に帰り、会社経営に取り組んで行こうと思います。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
東京に行った息子から家内にメールが届いた。「返事を出せば」と水を向けたところ、20分位かけて入力していた。「出来た!」と言うので見ると3行しかなかった。研修をせねば.....。(by aruji)●おまけの息子●
「このスパゲティー、アンダンテだね」と下の息子が言う。そりゃ音楽用語。アルデンテだろう?! こいつも研修をせねば.....。(by aruji)

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