自分の時間
女将の仕事は、目がまわる程忙しいものです。基本的には、休日というものはありません。オフになれば、たまには休まないと病気になりますから、最初の頃倒れた経験から時々休みますが、一日中本当の意味で完全に仕事を離れていることは無い生活です。でも、わたしはどんなに忙しい毎日でも、自分の時間は持とうと決めてきました。社長とは一緒の仕事でも、思った程同じところにいませんし、別々の事をしているので、一年中べったりくっついているわけでもないのですが、社長には関係のない、私だけの時が必要だからです。
女将という職業は、私の場合は特に、社長と言う人が居てくれなくてはつとまりません。でも、頼りすぎても逆にやっていけません。どちらかというと、社長は外、女将は中の仕事なのです。一人で決定をくださなくてはならない事も多く、頭の中がパニック状態になることも少なくありません。そうした中で揉まれて、だんだん強くならざるをえないようです。様々なことをくぐりぬけ、少しづつみんなをひっぱっていく。お客様の前でもだんだん堂々としてくる。それは、自分自身の力ではあります。ただし、私はやはり社長が側にいてくれるからこそ、出来る事なのです。
それはそれとして、自分の時間づくりは、わざと社長と離れるための大切な作業でもあります。社長が、決して知り得ない、時間的空間と私だけの心の世界は、夫婦であっても仕事のパートナーでも、必要な距離なのです。社長にしても、出張があって遠く離れたり対外的な仕事で動くと、私の目や手から離れる事になり、お互いにちょうど良い解放と寂しさを同時に共有できます。以前は、好きな人ができると、片時も離れたくなかった。いつも一緒がよかったのです。今も、基本的にはかわっていませんが、たまには離れることも大切な必要条件です。そして、仕事からも一時的ではあっても解放されます。この忙しい女将職では、そうした時間をつくることは至難の技ですが、全く旅館に関係のない時をもつことで、精神的なリフレッシュにもつながっていきます。自分が没頭出来る趣味を持ち、その世界の中で無になる時間の中に身を投じ波立つ心を静め、自分自身とむきあいたいのです。
娘の頃、師範免許まで取得した習字も、十数年やらないともうすっかり駄目です。でもずっと習字を長いことやりたいと思い続けてきたので、今は書道に一生懸命です。まだまだ下手でがっかりもしますが、楽しみながら長く習い、最終的には、宿の中でも自らの作品を飾りたいと思います。私が今習っている先生は、テレビではおなじみの大先生です。私はあまりテレビを観ないので、習うようになってからそのことを知ったのでした。書店で、年賀状を書く参考にと、毛筆書きの本を探しているときに先生の素晴らしい「書」に出会いました。それからは、もう絶対にこの先生でなければ習いたくないと思い、必死で先生の教室を探しました。本に紹介されていた人気の先生の教室は、問い合わせるといつもいっぱいだそうです。でもその他にもたくさん教室があることを知り、先生に直接手紙を出しました。少し時間はかかりましたがお返事を戴き、やっと弟子入りを果たしたのでした。先生のお弟子さんたちは、ほとんどの方が、自分の教室を持っているような立派な先生たち。私などが入れるようなレベルではなかったかなとおじけづきました。でも、せっかく弟子にしていただけたので、あせらず長く、いつか上手になるように練習していきたいと思います。
娘のころ習っていた習字は、字のごとく「字を習っていた」わけですが、今の教室は、芸術作品を生み出す場である様です。私は、オフの休日にじっくりと書に向き合う時間を作り、日常とかけ離れた芸術の世界に身を置きたいのです。そして今こうして書いているメールマガジンの執筆活動のように、詩を作ったり、コラムを書いたりもしたいです。年を取ったら、水墨画を習ったり、自分の趣味が、仕事に生かせるように出来たら最高です。仕事が趣味と言う人も魅力的ではありますが、やはり、仕事以外にも生き甲斐や、自分の能力を発揮出来る場所があった方が、人間として厚みが出るように思います。女将職の場合は、衣食住全てを取り扱うせいか、一つでも多くいろんな才能にたけていると便利です。今に引退したら、館内に自分の書画を飾ったり、献立表を書いたり、花を生けたり、好きな煮物作りでもしようかと思い、夢がふくらみます。そして苦手な分野も、今、特訓中です、才能はなさそうですが、新しい事に取り組む楽しさがあります。自己啓発には、ずっと取り組み続けたい、一生勉強熱心でありたいと思います。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
「あなたのですよ!」自宅の床に落ちていた黒い靴下をつまんで、家内は非難の目を私に向けた。「あれ?変だなぁ、脱ぎ捨てた覚えないのに」と言うと、「じゃあ、私の?」と調べだした途端、家内が持っていた靴下の一部が下に長~く垂れ下がった。それ、あなたが脱ぎ捨てたストッキングじゃないか!(by aruji)*ついでに大女将*
館内のある場所に小座布団を置こうと考えた。母はそこに置くのが気に入らず、家内に不満を言ったという。家内は、「私は良いと思いますよ」と言ったのだが、家内が自分の意見に賛成してくれたものと思いこんだ母は、勢いよく自分の意見をまくしたてた。見かねて「あのぉ~、私は良いと思ったんですけど」と家内が言うと、一瞬黙って「そうなの」と言ってから、急に古い布の入った風呂敷包みをあちこちから出して来て、あれが良いこれが良いと話し出したという(笑)(by aruji)

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