育ち行く従業員
今年になって新しい人材が急に増えました。今迄にもちょこちょこ入っては来ていましたが、たいがいは時々手伝いにくる程度の就業時間で、紋屋の根幹になるような働きをする人は、きまって古くからのベテラン達でした。
うちのベテラン達は人それぞれではあるものの、みんなアットホームな田舎のおばちゃん達でして(おばちゃんは失礼かもですが、、、)マニュアル的でない温かさがうけていました。みんなベテランで安心出来る。アルバイトの女の子みたいな人が居ないところが良いとまで言われていました。そこへ新しい若い人材が入ってきて、みんなとうちとけるかしら?とかお客様うけはどうかしら?と心配したりしました。
ところがまるで手を返したように、最近のお褒めは新人達へのひたむきさに集中しています。今年25歳になるフロントマンは子供受けが良く、(フロントのお兄ちゃん)とやんややんやの人気振りです。お子様達がゲームを借りに来た時に簡単なマジックをしてあげたりして、ほかの人ではお子様の満足に至らない様子です(笑)。はじめは内務係り(布団敷きや掃除・皿洗いなどの仕事)からしてもらったのですが、以前、まだ内務さんが来ない時間に布団を敷いて欲しいとおっしゃるお客様がいらした時、お部屋にご案内したついでに布団を敷いて差し上げ、お客様から「あのお兄ちゃんはいい子だったね。」とチップをお預かりしたこともございました。なかなか布団敷きをしてチップを頂ける人は居ないと思います。
また、ごく最近入社した女盛りの彼女も、意識しなくても一生懸命さが出るので、ひたむきな姿や誠意が伝わってきて非常に評判が良いのです。客室係をしたとき以外で、売店に立った時でさえお客様から一緒に映した写真が届いたりします。それはすごいことだと感心し、本当に良い人材に恵まれたと心から嬉しさで一杯な気持ちになり本人にも誉めてあげました。彼女はお花も大変良いセンスなので、褒めちぎってお花係にしました。私も鬱病以来余り花活けをする時間が取れないのと、母も花活けをするとそれだけで疲れてしまう様子です。そのため段々花が粗雑になり「花が枯れていた。枯れている花を飾るくらいなら飾らない方が良い。」というお声まで出て私も困っていたところでした。彼女が来てくれてから、何処を見ても満足が行く可愛い花にあふれていて、私がやっていた時よりずっと満足しています。今でも時々彼女が休みの時にお花を活けますが、毎日していた時よりとても新鮮な気持ちで取り組めるようにも思いました。何しろ他の仕事も多いので大助かりです。本当にありがとう!
今春入社した彼女は、私の息子と同い年ということで、社会人として教育することに少々苦労しました。まだまだ社会人としては一人前にはなりきっていません。しかし、持ち前の独特のジョークがお客様の前でも出るほど最近は客室係にも慣れて、彼女の熱烈なファンが出来るようになってきました。なかなかやるじゃないの!猫舌のお客様がいらした時、(あーこの方は猫舌なんだなあ)と気付いてあげて、朝食の時、よけいにひとつ覚まし用のお茶碗を置いてあげたのだそうです。(それは、お客様から教えていただいたのです。)そうしたなにげないやさしさこそ本物の心遣いです。そのことを知らない他の従業員が間違えてひとつ多く出したのだと勝手に思い込んでかたづけてしまい、お客様はがっかりなさったそうです。せっかくのやさしさも皆に知らされていないと生きてこないと思います。
接客の仕事の楽しさは自分指名の顧客様が出来てくることにあります。もちろんそれは大切なことです。しかし、個人では限界があります。一人だけが素晴らしいのではなく、みんながそれぞれの個性でしかもいろんなスキルを公開し合い、質の高いおもてなしが出来ることが理想です。チップを頂いたからと後になって何か返すのも、悪いことではないかもしれませんが、チップは、お世話になるからとお客様が気持ちで下さるものなのですから、必ず何かをわざわざ買って返さなければならないものではありませんし、返す人と返さない人が居るのは、紋屋としては余り喜べない状況です。そうした物と物との関わりではなく、心と心の関わりであって欲しい、「こうすれば自分のファンになるだろう」と予測してするものではなく、喜んで頂きたい一心でおもてなしをするものであって欲しい。私はそう念じています。チップは、必ず必要なものではありません。あってもなくても一生懸命、心を削っておもてなしに努めて欲しいのです。
新人の健闘振りも嬉しいですが、少々手厳しいお客様などは、やはりベテランで非常に細かいことにまで気がつくルーム長がピカイチです。たまたま小グループさんが多かった日に、カラオケして大騒ぎのお客様のお隣が、静かな家族連れだったことがあります。話をしたくても聞こえない、と御主人がむっとしていると聞いたので、早速私は謝りに行きました。御主人以外の方は怒ってはいらっしゃらないのですが、もう御主人は何を申し上げても聞き入れて頂けないご様子でした。一つ大きめの部屋がフリーのお客様が入らずにに空いていたのを思い出し、もうお料理が出されてしまっていましたけれど5分以内に移動しますからと、男性従業員総動員でお運びし、結果喜んで頂けたのです。それもルーム長が係でしたから出来たことです。普通なら、いやがってなかなか私の申し出を聞いてはくれないでしょう。その後もルーム長のそつが無いもてなしと誠意、教養ある話に御客様は満足してくださったのです。そう言うときはやはりベテランさんが一番なのです。
私が紋屋にきた頃は、お客様よりも働く人の立場で宴会場のセットがなされることもしばしばでした。長年同じ職場、同じ仲間同士で働いていると、チームワークはよくなりますが、新しい風が吹きこまれないため悪い癖もつきやすくなります。初心忘るべからずと言いますが、簡単なようで結構難しいのです。いろんな経験を積み逞しく成長することも望ましいのですが、時々新鮮な空気に触れ、初心に返ることも非常に大切なことと言えるでしょう。
私もこの頃、この業界にやや慣れてきたと感じています。辛い思いや苦しい経験は女将として立派に成長するためには必要な条件でもありますが、いつまでもお客様の立場に立って考えることが出来る人間でありたいと切に願う気持ちです。「仕事の為にお客にお世辞使うのはもう疲れちゃった。」と母は言います。私はその方の誉められるところを必ず見つけるので、お世辞は余り言いませんが、いつかそうなってしまうのかなあと心配になります。そのかたわらでお客様に誉められて喜んでいる新人達を見ていると、気持ちが透き通っていくような自分を感じます。人間皆慣れてくると、そつなくなんでもこなせるようになってしまうので、新人に比べると必死でやっている印象が薄れてくるのでしょうね。ベテラン達には、私と同じように新人達を育てる喜びを味わってもらい、双方で良い意見交換や見習い合うようにして欲しいと考えます。やはり新しいことへの取り組みは、若い人のほうが抵抗はないようです。その代わりちょっとした経験不足によるミスは、新人さんは多いですね。お互いに良いところを吸収しあって高めていけたらと思います。
このごろ、どうも筆が進まなくて、もうこのメルマガもだめかなあと頭を抱え込んでいました。私は気分屋で、泉のように言葉が湧いてくるほうですが、泉が枯れている時は、言葉も干からびてしまいます。社長は「さすがは便秘症だ」と笑いますが、今なら書けるという時にいつもパソコンに向かっていられないので難しいのです。「書けない時はお休みでも良いじゃないですか。」と、ある私が尊敬する方がメールを送って下さいました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。無理をせず少しづつ努力してまいりたいと思います。これからもお見守りくださいませ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
客室へ配るテレビ番組表の日付を、フロントの武山君が一日間違えて記入し、コピーしてしまった。全て作り直す事になるのだが、もったいないと思ったのか、家内は「明日使えば?」と明るく言い放つ。明日は明日で違う番組なんだからね。(by aruji)

ご予約・プラン紹介はこちら