本当にやりたい事
みなさん今なさっている仕事は、心の底からやりたいと思い選んだ道ですか?私の場合正直に言って、たまたま社長と結婚したから女将をするようになったわけです。今までずっとそう考えてきました。私が一生懸命働けば社長が喜んでくれる、それが自分自身にとっての幸せだと。紋屋は私の宿ではなくて社長の宿だと、いつか社長が私よりずっと早く死んでしまうようなことが万が一あったら、私は東京へ帰るしかない。私はこの仕事が楽しくてやっているわけではない。こんなに大変な仕事はなかなかあるものではない。遣り甲斐はあるけど、それより大変さの方が勝っている、そう考えていました。私は接客の仕事は大好きだけれど、こんなにも気が休まらない仕事はない......。あーなんてマイナスに向かった考え方なんでしょう!そんなことを考えているようでは、一人前になるわけありません。
まだ鬱病が治りきっていないのかもしれない。昨年、紋屋に来てくれているアロマセラピスト小池さんと話をしていたとき、「私はマッサージが本当に好きですね。でもアロマをとおして自分が本当にやりたいことはなんなのか、と考えるんです。お年寄りへのケアなのか、子供達へのセラピーなのか......。」私はその言葉を聞いたとき、はっとしたのです。(私は、本当にやりたいことが何なのか考えていない)と。また、前回もご紹介したサイコセラピストの近藤 裕先生が、今与えられている仕事を心から楽しんでいますか?とご本の中で問いかけていらして、私は、つくづく考え込んでしまいました。どうせやるならなるべく楽しんで仕事をしたほうが良い。それはそうに決まっています。
一度しかない人生なのに、愛する夫のためとはいえ、心から楽しめない職業について苦労を背負いながら生き抜くなんて....ちょっとした時代錯誤でしょう。
本当は何をしたいのだろう?それからずっと考えてみました。私にとって接客の仕事は天職であることは間違いない、そう思えます。でも、女将職は?女将の仕事のどんなところが楽しいだろうか、考えてみました。まず、少なくとも今は人を育てることに楽しさを感じている。なかなか思うように育ちはしません。一番若手の社員がいつか親に対する口答えのような言葉を言わなくなると良いな、言わなくなるような教育が出来たら良いなと思います。もしかするといつかそんなふうに育ってくれるかもしれない。少しづつみんなが私の考えに染まってきて、冷水ポットが欲しいというお客様のアンケートに対して従業員の方から「女将、安売りのときに買い占めちゃいましょう!」なんて言ってくれる。私の考えについてきてくれるようになって来ている事は事実です。それはすごく嬉しいし遣り甲斐もある。
それにこの執筆活動もずっと前からやりたいと思い続けて来たことです。一生に一度で良いから本を出したいと夢のように思っていたのです。会社勤めだったら出来ていないかもしれませんよね。
そして私はやはり接客の世界における人と人との出会いにいつも感動しているなあ、と思えました。先日、フリーでいらしてはじめてお目にかかった青年から「女将さんに出会えて本当に良かった。こんなに奥深い微笑みを持っている人に出会ったのは3年ぶりです。」とおっしゃって頂きました。その方は最近失恋なさったそうですが、「この次来る時は必ず彼女と来ます。そして一緒にアロマをやります。」と。私にとって接客の現場における人との出会い、心と心をつなぎ合わせることが出来た時の幸福感、お客様に喜んでいただくことが何よりも好き。だから私はやはり今紋屋の女将でいられることが幸せなんだと、とても新鮮な気持ちで気付いたのです。なかなか紋屋や、私達の考えに理解をして下さらないお客様も多いです。一日に1組いるかいないかくらいの確率かもしれないです。リピーターになってくださるようなお客様と出会えるのは。よくお越しくださるお客様でも、最初は簡単な挨拶を交わすだけだったのに、回を重ねる度に段々お話が弾むようになり、係からも「『女将にくれぐれもよろしく』って言ってましたよ。」と言われ、あーやっと心が通じたかなと思い、それはもう嬉しいですよね。
新しい献立を何にしようかと頭を悩ませたりしますが、お客様のお部屋へ伺ったときの会話がちょっとした小さなヒントとなり、その後のお客様に好評だったり。接客の現場において辛いことも多いけれど、それだけにすごく嬉しいこともある。よくよく考えてみると結構楽しいことがたくさんみつかります。前にご紹介した、私が第3のお母さんと呼んでいるお客様も、はじめは「私は女将がいなくたって良いのよ。」とおっしゃっていたのです。ところがこの頃は「あなた、いる?」って。初めてのお客様がセルフのコーヒーコーナーに戸惑っていると、せっせと世話をしてくれたり、「朝食のとき一人だけ膝をつかないでお茶を出している人がいたわよ。でも怒らないであげてね。」などと教えてくださるようになり、なんとありがたいことでしょう!「書物棚に私が読んだ古本を飾って欲しい。」と多くの書物を頂き、なんだかお客様と一緒の宿作りが始まったような気分です。これも私がここの女将をしているから出来ること。有難いと思わなくちゃ損と言うものです。せっかく大好きな接客の仕事をしているのに、私は何を迷っていたのでしょうか。
全国に大勢の女将をしている方がいらっしゃる。みんなそれぞれの女将の色があるのです。私は紋屋には紋屋にしかない、私にしか出来ない女将になりたいのです。このメルマガを執筆しているだけでも他の方には出来ない、特色ある女将になれる気がします。時々泣きべそはかきますし落ち込んだり逆に盛り上がったり、忙しい人だなあと思われるかもしれません。私は紋屋の女将になったことを一生誇りに思えるように、少しづつ歩んで参ります。この世に起きる事はすべて必然だとか。必ず出会うべき人には出会うべきときに出会うそうです。私も出会うべきときに社長と出会い、こうして今女将をしているのです。是非、応援してくださいね。
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◆素顔の女将◆
接客業について熱く私に語る時の家内は、本当に光り輝いて見える。その思いの丈に感動する事さえある。普段の天然ボケ(笑)との落差に戸惑うが、これもまた我が家の女将の素顔である。(^-^)(by aruji)

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