布良星(めらぼし)の夜
本当に少しづつではあるけれど、着実に顧客様が増えている。それでも、いつつぶれてしまってもおかしくない状況ではあります。長い不況の風に追われ常々大変な経営状況の中にいても、かすかな希望で心が温かくなるような一夜の出来事がございました。春や夏はシーズンと言うこともあり、特に再度御来館のお客様が多い季節です。でも今回は、特に今迄に経験したことがない嬉しい光景でした。今度が3度目の来館になるご夫婦から、布良星(正式名称カノープス)という星を教えて頂いたのです。空気が綺麗なので、我が家からもそれはそれは美しい星空が望めますが、その星は季節限定でなかなか見ることが出来ない珍しいものだそうです。
御主人様は星の研究を始めて12年に成るそうですが、ご自宅は私の実家の近くでして、都内の空気が余り澄んでいないところです。「肉眼でこんなに星が綺麗に見えるなんて何年ぶりかしら?」と奥様がつぶやきました。「天体望遠鏡で見るよりずっと素敵。しかもあなたの77歳の時に。」奥様の言葉がひとことひとことなんて美しい響きなんでしょう。
その方々は、毎年2月の同じような時期にお越しになります。お花の時期ですから珍しいことではありませんが、奥様はポピーをご覧に、ご主人はこの季節夜8時半頃から水平線上に昇ってくる布良星がお目当てだそうです。南に視界が開けているところでしか見ることは出来ないそうです。
私は布良星の事を知らなかったので、そのお話にすっかり心を奪われてしまいました。客室係に興奮してその話しを伝えると、ちょうどその時刻に成って係が「今布良星を教えて頂きました。これから外へ見に行くそうです。」と教えてくれました。ロビーに出て外を覗くと、ご夫婦が仲良く寄り添って水平線をご覧になっている姿が見えます。思わず私もショールを羽織り、外へ飛び出しました。はっきりと布良星を肉眼で捉えることに成功しました。更に見上げるとずーっと天の川が....。それは、少し山の方へ入ってみた方がきれいでしょうが、お客様と肩を並べ、星を見つけられた喜びに心が躍りました。
そしてもっと素敵だったことは、他のお客様にもそのニュースが伝わり、このご夫婦だけでなく、他のお客様も一緒になって星を見上げられたことです。係も少し興奮気味でした。「あの星が見られるというのは、すごく縁起がいいんですって。長生きするそうですよ。」その話しに今迄関心を示さなかった母が急に目を輝かせ、「私にも教えてよ。」でも帰りの車の中で「どれ?」と聞かれても、もう私には判りませんでしたが....。私はお客様から本当に多くの事を教えて頂いている。紋屋の中のことも、そして外の事も....。そして私とお客様の心が通い、お客様同士の心も通う。自然も、人の心も共に素晴らしい!こうして段々と一人一人のお客様との心の通わせ合いが輪や和を生み、こころの安らぎを生み出せる宿屋に成ったら....と夢が膨らむ思いでした。
私達夫婦は再婚同士で、私の息子は初め房総に来ることを嫌がっていました。仕方なく私について来たのです。しかし、「夜の星の美しさだけは最高だね」と少し経ってから言い始めました。流星群が見える時などは、兄弟で家の屋根の上に登って、よく社長から叱られていました。今までにも星に感動したことはありましたが、自分が住んでいるところがそういう環境にある事は、都会育ちの私にはちょっとした贅沢です。
絵を描く方、写真が趣味という方にも美しい日の入りや日の出、荒れ狂う海の様子等、星以外でも楽しめる要素は多くあります。観光施設にはいまいち恵まれていませんが、私は人間が作り出した施設より、そうした自然に接して忙しい毎日で疲れた心を癒された方が、人間本来の健康を取り戻せるような気がいたします。そして宿ではゆっくりとのんびり過ごし明日からの元気を養うのです。
私は東京に良く行きますが、最近は星を見る気持ちは東京ではしません。夕焼けの美しさも都会ではいまいちです。静けさ、暗闇、土のぬくもり、磯の香り。忘れかけているような日常を取り戻しに、お出かけ頂きたいと思います。
私は土地の人間ではないので、この地を訪れたお客様と同じように、この地の自然の美しさや都会ではめったに見られないものへの感動を覚えます。そして、多くのお客様から本来の美しい日の出の見方や、夜の部屋からの風景の見方、雲間から差し込む光が海面に映った時の名前や白浜の海の中の美しさ(海面下にどんな魚が泳いでいるか)等を教えていただいています。そしてそれを、他のお客様にお伝えし、白浜の自然に感動していただけたら幸甚でございます。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
風呂上り、寝室にある椅子に勢いよく足の小指をぶつけた。「くっ~~~!」と痛みに悶絶していると、「どうしたの?」とベッドから起き上がって家内が聞く。状況を一目見て理解すると、そのまま何も言わず家内は寝てしまった。この薄情者!(by aruji)*ついでに大女将*
母から息子宛てに電話があった。
  母 :「売店で売ってる○○だけど、食べない?」
  息子:「いらな~い」
  母 :「賞味期限が切れてるけど、社員に食べさせたら大丈夫だったよ」
  息子:「そんなもん、いらん!」
紋屋の売店で賞味期間が切れた物は、こうやって処理されます。(爆)(by aruji)

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