着物
女性にとって「着物で働く」ということは、一種のあこがれでもあると思います。普段洋服で過ごしていると、たまに着る着物は用意も片づけも大変です。たまにしか着ないと着付けも上達しないので、美容院に行くことになり、お金もかかってしまいます。仕事で着られれば一番良いと思うかも知れませんね。
私が着物を着るようになったのは、二年前からのことです。一昨年の夏、勉強のために主人が連れて行ったくれた宿で、女性達が着物で働いている姿が大変美しく見えたため、やはり「日本情緒は着物から.....」と確信したのです。それから着付け教室に通い、何とか着れるようになりはしましたが、実際に格好よく着れて働ける状態になったのは、それから3ヶ月位経ってからのことです。何しろ着物に慣れないと、早く歩けませんし走れません。労働には不向きなように思ったものでした。今では毎日パタパタパタと動き回っています。しゃなりしゃなりしている暇なんて、ほとんどありません。
一番大変なことは、何と言っても「暑さ」との闘いです。房総は4月下旬から11月上旬まで暑いのです。特に6月から10月までの暑さは本当に身にこたえ、好きでなければ堪えられない酷な状態です。しかもお客様が帰った後は、冷房も切ってしまいます。エレベ-タ-も無いわが紋屋で、花でも生けに行ったら全身汗だく状態。もう死にそうでした。
毎日着物となると数が要ります。私の着物の60%は、実家の母の着物です。母は昔、毎日着物でしたし、今も着物が好きなようです。着物は少しくらいサイズが違っても着れるところが便利なのです。そんなに流行も激しく変わりません。実家の母や姉や、紋屋の母の着物を少しづつ着させてもらえる。嬉しい限りですね。紋屋の母は、着古したものは仕立て直しして、最後の最後まで使う方法を教えてくれます。何度も染め直したり、染め直しが出来ないものはコ-トにしたり、それも出来ないのもは、バッグや草履、座布団カバ-になります。
季節の変わり目のたんすの入れ替え、陰干し、毎日の手入れと、本当に一仕事です。好きでなければ続かないかも知れません。着物は高価なので、私は自分で買うときはリサイクルショップを大いに利用しています。惜しげもなく着れますし、特に夏物は汗でどうせダメになってしますのですから.....。リサイクルショップでも実際に永年着た着古しを売っている店と、そうではないものを売っている店があります。用途を考えて使い分けるようにしています。
現在、着物を着れる人はどんどん減少しています。確かに機能的ではありません。着物は行動的でもありませんし、手間が掛かります。でも、洋風の家で洋風の食事、洋服の生活。だからこそ日本旅館には和服が必要な気がします。和服には、しとやかなしぐさしか似合いません。和服姿こそ日本らしいと思います。日本文化を大切にして行く上でも、仕事のときだけは和服でお客様をお迎えしたいものです。
前職は立ち仕事で、腰痛や外反母趾に悩まされていましたが、今はどちらもかなり良くなりました。腰痛や合わない靴に悩んでいる方には、和服をお勧め致します。
私の母くらいの年代の女性のお客様から、「まぁ、やっぱり旅館だから和服を着ているんでしょう。偉いわね」と言われますので、「実家の母からもらったんですよ」と言うと、「地味だけど上品な柄で良いわよ。頑張って着なさいね」と励まされます。いつか紋屋にも食事処が出来たら、その時には客室係りにも着物を着てもらいたい、と夢だけは膨らんで行くのですが、いつになることやら.....。
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◆素顔の女将◆
 家内は自分から着付け、茶道、華道を習い始めた。趣味と言うわけではなく、女将としてのたしなみだそうだ。その向学心には感心するが、ある日、新しい着物が届き、家内がしつけ糸を切っていた。しばらくすると、裁縫箱を取り出して縫い物を始めた。どうしたのかと思ったら、しつけ糸ではなく本縫いの糸も切ってしまっていた。あ-あ-。 (by aruji)

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