くつろぎの裏側で
今年の夏も、大変厳しい暑さになりました。そして今はまた残暑の真っ只中、早く涼しくなって欲しいものです。
毎年、夏は特別忙しい季節です。暑いだけでかなり消耗するにもかかわらず、休みも取れずにぶっ続けの1ヶ月、本当に体力的にも精神的にもきつい夏季シーズンです。最後のほうになると正直に申し上げてもう限界の状態なので、その中でお客様を笑顔でお迎えし、クレームにも真摯に対応し、従業員にもねぎらいの声掛けをするのです。毎日毎日「後もう少しだから頑張ろう。」そう自分自身を励まし言い聞かせるのです。前職のころは、いつも社長から「あなたは山のように休みがあっていいね。」と言われていました。百貨店の場合、毎月平均9日の休みが取れました。一日中立ちどうしの仕事なので、9日の休みがあっても決して体は楽ではありませんでしたが、お互いに相手を羨ましいと考えていました。
自営業の場合、出張などに合わせて個人的な用足しも出来ますし、旅館業の大変さを知らないその頃の私は、社長は自由があって良いなあと思っていました。社長も、一日中立ち通しの仕事の辛さは経験していないので、どんなに足がむくみ痛むか、腰を痛めたり生理痛がひどくなったり、身体的な苦痛を理解できないでいました。お互いに隣の芝生が青く見えていたのですね。
今から考えると百貨店時代は、1年に2度の連交という休暇があり、一度に10日程度の連休が取得できる楽しみがありました。また、休みの日は全く仕事とはなれた生活が出来ていました。気分転換は十分出来ていて、その点では大いに恵まれていました。しかし朝9時15分頃出社して、夜7時半頃まで椅子にに座っている時間は合計しても30分無いくらいでしたから、かなり永いこと座りたい病に悩まされました。(電車などの乗った時、座ることに執着する病)今は、座る時間はかなり多くなりました。余り永いこと同じ姿勢でいることもないので、その点ではかなり楽です。でも和室での接客なので、立ったり座ったりが非常に多いのと、勤務時間が経営者の場合どんな日も半日以上になること、エレベーターが無いので4階建ての建物の上り下りが大変なこと等が、今の身体的な辛さでしょうか。最近思うことは、身体的な辛さに加えて精神的な重圧です。休暇を取ってくつろぎにいらしているお客様を迎える私たち。限界に近い体調の中、そうした大変さを見せずにお客様に至福の時をご提供しようとするのです。
まだまだ私は一人前には程遠いと毎年思うのがこの季節なのです。どうしてもくつろぎを提供できていないと感じるのです。どんなに疲れていても、苦しくても辛くても、それを微塵も見せずに心から自分自身満足の行く接客ができることがプロであり、疲れを見せてはいけないのです。
「ほかの旅館さんは、みんなどうしているのかしら?」と私がぼやくと、社長は、「そんなに一生懸命じゃないところのほうが多いんだよ。」と私に言いました。当然そうじゃない所もあるでしょう。しかし、一番の達人は本当に力を注ぐべき時に力量を発揮しているのではないでしょうか。
実は今年の夏、クレームで一番疲れていた時、先輩の旅館の社長様からメールを頂きました。大変謙遜していらっしゃるのですが、実はとてもすごいことだと私は心から感心しました。無理難題をつきつけて今後の経営のプラスにならないお客様の場合は、自分自身の心の中で整理をつける。50歳を過ぎてから、楽に生きようとご夫婦で話し合われたそうです。しかも奥様に対して大変感謝されていて、ご自分のお力を誇示されない。素晴らしいことだと私は眼からうろこ状態でした。
もちろん女将の挨拶は大切ですが、それよりももっと大切なのが、心遣いを自然に表現し、お客様の心に十分伝わるようなおもてなしをすることだと思うのです。一生懸命すぎてもお客様は却ってくつろげない場合も出てきます。いつも一生懸命で、というのは私の信条です。しかしそれと同時に、いつもベストな自分であれることも重要ですね。ベストな自分でなければ力も半減、まだまだ修行が足りていないと今夏も反省しきり、来年は少し余裕がでるよう努力したいと思います。
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◆素顔の女将◆
寝室に入ると、家内が背をむけて本を読んでいた。何を読んでるのかな、と何気なく家内を見ると、顔中が白い紙で覆われてていたので、思わず「わぁ!」と叫んでしまった。聞けば「シートマスク」と言う、ある種の美顔パックだと言う。驚くから予め言っといてよぉ。(by aruji)●おまけの息子●
夏休みで帰省中の上の息子とジャズプレーヤーの話しをした。彼はビル・エバンスの曲が好きだという。チック・コリアの事を話すと、側にいた下の息子が「チックってどういう意味?」と聞く。「人の名前だよ」と言うと、「何だ、韓国のことじゃないんだ」 彼はチックな韓国(=コリア)と思ったようだ。(by aruji)

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