秘湯を訪ねて
今回、東北にある秘湯を研修会で訪ねて来ました。東北は私にとって大変思い入れのある土地ですし、特にこの季節に行くと残暑が感じられないので、とても過ごし易く帰ってくるのがいやになりました。
今回は、個人で勉強するのではなく、他の立派な旅館のオーナーさんたちと一緒ですから、私にとっては緊張の連続でした。でもそうしたことも勉強のうち。私のように経験浅い人間が、長く旅館業に携わっている方々と行動をともにし、少しのことでも吸収できれば、やはり個人旅行では得られない勉強が出来る筈です。
有名旅館のオーナーさんばかりですと、普段なら見られないところの見学が出来たり、プライベートで行くと聞けないような話しが聞ける事も大変な魅力です。宿泊したところ以外の旅館さんも多く見学し、昼食場所なども個人で行くとしたら見つけ出せない、参考になる店でとる事ができました。私は、秘湯そのものが初めてでしたから、秘湯の魅力にすっかり惹かれてしまいました。おもてなしそのものは、なんと言うこともないのですが、風情が素晴らしいのです。秘湯の情緒、すごく私好みでした。
例えば建物の感じは、一昔前の日本のようです。戦後の学校のような感じで、決して豪華ではないのですが、非常に素朴で懐かしいような気がして来るのです。また秘湯は雪深いところですし、厳しい冬でも守りつづけるのは、計り知れない苦労があることだろうと思いました。木造建築の管理、排水の管理、電力の維持、そして冬の除雪作業。
それだけでも大変な労力と努力が必要なので、他の部分には手がかかっていません。お部屋には、ドライヤーもないし、テレビも冷蔵庫もない。布団はびっくりするほど重いですし、お風呂にも固形の石鹸しかありません。もちろんアメニティーなるものはありません。洗面所は学校の雑巾を洗うような流しですし、本当に何もないのです。紋屋はなんて過剰なサービスをしているのだろう、と思ってしまうほどでした。温泉が売りですが、浴室自体はほとんどお金をかけて作ったものでもなく、造りは大変質素そのものです。内風呂も、非常に簡単な壁があるだけで、洗い場もひとつしかありません。シャンプーやリンスだって、決してほめられた品質とは言いがたいものです。浴槽も簡単な木作りで、砂利が敷き詰めてあるだけのもの。着替え場所も、大昔の臨海学校を思い出させるような造りでした。
しかし、お料理は質素なのに素晴らしい工夫がされていました。あるものを存分に使い、房総のように海の幸や、高級素材は出てきません。しかし、手をかけてとった山菜を苦心して調理してあり、ひとつひとつ手作りの味が滲み出ていました。味噌ひとつとってもそれぞれの味わいがあり、同じ岩魚でも調理法が違い、また絶品でした。
もともと料理とはこういうものなのかなあ、と考えました。高級な素材を活かしておいしく食べられるようにするのは意外と簡単なのではと。一つ一つ草を取り、実を取り、その季節にしか取れないものを様々な調理と保存法で工夫する。その他の部分には手をかけないが、お客様もそれを承知して選んでくる。それでいいのではないかと思いました。残念ながら、紋屋は秘湯ではないのでそこまでの個性は持ち合わせていません。しかし、頂いている料金から考えて、かなりいい線は行っていると感じました。もちろん、まだまだやらねばならない事はたくさんありますし、問題も山積しています。しかし、苦心して編み出している紋屋のおもてなしは、間違いないと思いました。
そしてもっと大切なことは、紋屋はこういう宿ですと、個性をもっと強くして、他にない宿になることだと。よく旅行会社のアンケートで、90点以上の宿として紹介されているところは、それなりに評価される基準は確かにあるのでしょうが、実際に泊まってみると、秘湯の宿にあるような独特な雰囲気やそこでしか味わえない料理ではなく、どこにでもある宿のような気がします。
もちろん紋屋もまだまだ普通の宿の範疇です。それを、普通の宿ではなく紋屋はこういう宿なのですよと打ち出していけるような、そんな何かをお客様と一緒に作り出していけたらいいなあと考えました。今回参加していた旅館さんは、殆どが有名旅館。私達など及びもつかない存在です。「今度良い露天風呂作ったんや。」とか設備投資の話を盛んにし、海外旅行に参加する話など、景気がいい事ばかりでした。「うらやましいなあ。」とため息が出てきます。でもきっとそういう旅館さんも、大変な時期はきっとあったことでしょう。
どんな栄華も一瞬でなくすこともあるわけですし、とにかく死に物狂いで勉強し、努力を重ねていくしかないと思います。ひとつのことを進めるにも時間はかかります。皆さんに支えられながら、紋屋の成長をどうか見守ってください。
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◆素顔の女将◆
ブラスバンド部の息子がメトロノームを買ってきた。目覚まし時計のような箱型のものだと思っていたら、何と5cm位の大きさで耳たぶをクリップで挟み、イヤホンのように耳に挿しこむとデジタルな音が耳からリズムを刻むものだっった。家内には見る前に「想像を絶するメトロノームだよ!」とだけ話しておいたが、実際に実物を見ても全然驚かない。「びっくりしなかった?」と聞くと、「想像を絶するメトロノームと言うから、それ自体が踊るのかと思った」と身振り手振りのパフォーマンスをする。これは想像を絶する想像だ!(by aruji)*ついでに大女将*
母に携帯電話の操作を教えると、「これ押すの?これ押せば良いの?押すよ!押すよ!押すよ!」とボタンひとつ押すのにも大騒ぎ。それは、人生を決するような重要なボタンじゃないからね。(by aruji)

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