お見舞いメール
この度の台風被害に際しまして、多くの皆様から本当に心温まるお見舞いメールを頂戴しました。もともと馬鹿正直なものですから、皆様にご心配をおかけすることなど忘れてしまい、却って申し訳ないことをしてしまったと思っております。でもおかげさまで、精神的なダメージはかなり軽減されました。私自身、励ましの言葉がこれほど効果あるものだということを知りませんでした。改めて御礼申し上げます。何より紋屋と私自身が本当に元気になることが、皆様への一番のお礼になるかと思っております。本当にありがとうございました。このメールマガジンをずっと前から読んでくださっている方は、ご存知だと思いますが、私は初めからこの宿に女将になることが決まっていて、来たわけではありませんでした。「何らかの形で手伝ってくれると嬉しい」とは言われていましたが、こちらにきて段々女将をやるようになったのです。私が来た頃の紋屋は、今の紋屋とは考えようによっては全く違う紋屋でした。
その頃の紋屋は、バックはまだ母が仕切っていましたが、表向きはフロント課長が責任者でした。社長も、私が来る前の5年は離婚によって急に一人で小さい子供を抱えることになりましたし、何かとフロント課長や予約担当にまかせたままにしていました。一生懸命やってはいても、どこか心が空虚だったのかもしれませんね。
昔は団体旅館でしたし、細かい配慮やおもてなしは必要なかったのです。観光業界ではリピーターさんを増やすという考えも、当時はあまり一般的ではありませんでした。予約担当の接客はにこやかでしたし、フロント課長も決して悪い接遇ではありませんでした。でも、どこか私とは基本的に考えが違うと思えるところがたくさんありました。例えば、なにか食事の中に虫が入っていたというときに、お詫びに責任者は行きませんし、最後にタオルと湯呑みを差し上げるという程度でした。
また、部屋タイプ違いが発生した時に、たまたまお部屋を交換できなかったりしても、お客様が気づかないかもしれないから、とりあえず黙っておこうということにしていました。今から考えると、とんでもない指示をしていたと思います。そのころ何も権限が無かった私は、おかしいと思いながらも何も出来ずにいたのです。
社長も、私が前職で接客の仕事をしていたことは知っていましたが、温かいおもてなしをお客様にご提供する心やスキルを持ち合わせていることまでは知りませんでした。私が段々接客にかける情熱などを家で話すうちに、少しづつ社長の心が解け始めたのでしょうか。社長は、小中学時代にいじめをうけた経験などから、余り心のうちを外に出さない所があります。会社の中でも社長は雲の上の人でした。確かに社長業は忙しく、様々な旅行会社の企画書つくりだの、町や業界の会議だの、宿のなかにあまり首を突っ込めるひまはないかもしれません。しかし、やはり任せきりはよくありませんね。私から見れば、(どうしてなの?)と悲しくなることもありました。でも、ぽつりと「あなたのおかげで少し直ってきた。」と言ってくれました。お客様に対する私の接客や考え方、リピーターさんを増やしていく細かい心遣いの宿屋を、社長は紋屋のこれからの会社としての方向性として捉えるようになっていきました。
もちろん、前からのフロント課長と私とは、意見や人間性が違いすぎて、どうしても上手く行かなくなってきました。社長は、「あなたの考えが紋屋の考えなんだよ。」と言ってくれましたし、その考えについていけない従業員が結局辞めていくことになりました。そうなるまでにいろいろなぶつかり合いがあり、クレーム処理は私がやるようになって行きましたから、相当なストレスもたまりました。でも、それからが私としては、経営者として力をつけていかねばならない正念場になって行ったのです。99年の10月からこのメールマガジンを始め、おかげさまで今では心と心を通わせられる宿屋となってきました。何度かお越し頂くうちに、お互いに家族の中で抱えている悩みを話せてしまうこともあります。人間対人間として単なる言葉上の挨拶に留まらない会話らしい話しが出来る。そうしたお客様が数十組もあります。まだ、数回しかお越し頂いていないお客様からも、「ここへ来ると落ち着くんです」「我が家のようなんです」と。そうしたことが接客業における本当の喜びであるとおもいます。もちろん宿屋ですから、それ以上そのお客様のプライベートを覗こうとは致しません。一定の距離があるのに温かい信頼を築いていける。私はとてもすてきだと思うのです。人間は、皆様々な苦しみや悲しみを抱えながら生きている。それを癒しに宿屋に来る。贅沢ではない宿だけれど、心が温まり寛げる。そうした宿屋でありたいのです。
施設は更に豪華で新しい施設に負けてしまいます。紋屋の施設は本当に質素です。しかし少なくとも、経営者の人間像がはっきりしています。普段考えていること、抱えている病、現実にあった話しを率直にメールマガジンに書いています。それに共感してくださるから、だからこそ、この度のようなお見舞いメールを多くいただけたのだと思います。皆様のメールは、単に一度泊まったことがある宿だから励ましてくださった、という内容に留まるものではありません。本当に心のこもった、涙なしでは読めないような、一生のうちで今までもこれからも、もう無いかもしれないとさえ思えます。
お馴染み様の中には、口ではおっしゃらないのですが、たぶん励ましのためにお越しくださった方もあります。また、一度しかご来泊いただいていないのに、メールマガジンをお読みになったからでしょうか、お見舞い金をお送り下さった方まであります。有り難いなどという言葉では言い表しきれません。必ず元気になって、いつの日かきっと今より立派な宿屋になります。私達はまだまだ未熟者ですが、一生懸命勉強して参ります。本当にこれからも、紋屋をよろしくお願い申し上げます。
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◆素顔の女将◆
aruji:「あなたの好きなエンダイブ(注-1)があるよ」
家 内:「えっ!ご飯にかける甘いやつ?」
それはただのデンブ!(注-2)(by aruji)
    (注-1)サラダなどに使う鋸歯状の葉の野菜。
        ちょっと苦味のある変形レタスといった感じかな。
    (注-2)魚肉をゆでて(又は干して)すったものを甘辛く調味して煎ったもの。お弁当などの彩りに使いますね。●おまけの息子●
街なかで車両事故があり、道の傍らに事故車が止まっていた。それを見た息子が「初めて生ごわれ見た!」と興奮していた。今時の学生は「ナマゴワレ」って言うのかぁ~?!(by aruji)

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