褒賞に思うこと
紋屋では、アンケートでお客様に各係について伺う欄があります。良かったという数を一年間集計して、年に一度の経営方針会で褒賞します。その他にも、数ヶ月に一度褒賞しているものがあるのですが、どちらにしてもバック部門は日陰になりやすい特徴があります。以前は、アンケート用紙が今より書いていただく欄が少なかったので、とかく客室係以外は日の目を見ませんでした。
旅館の場合、部屋を掃除する人や、窓を拭く人、皿を洗う人、お風呂を沸かす人、調理部門の人など、とにかくお客様に直接接しない人たちの努力もとても大きいものです。直接お部屋にお料理を運ぶ人ももちろん重要です。大変さも重々承知しています。しかし、総合的なみんなの努力のもとに成り立っているのだと、一人一人が自覚して欲しいのです。チップ(もともと必要ではないのですが)を頂くのは決まって客室係です。昔に比べたら減ったとはいえ、かなりの確率で頂戴しています。他のみんなにも分けてあげたいなといつも思います。個人的に私と親しくなったお客様は、「皆さんで」とお菓子を下さいます。そうすればみんなに薄く広く分けてあげられます。「お世話になるので」と私にチップを下さった場合も、今までは係と板長に分けて渡していました。例えばそうした金額をためて、みんなに美味しいケーキを買ってわけてあげたり、もしくは誕生日に気持ちばかりの物を買ってあげたり、本来はしたいのです。
私が一番最初に働いていた会社では、社員の誕生月の人たちに、確かお菓子が振舞われたように記憶しています。今は不景気で従業員のみんなに喜んでもらえるような、店としてのイベントは、本当に少なくなってしまいました。でも、不景気だからこそ、頑張ろうという気もちが沸いてくるような場にしたいと思うのです。アンケート用紙を改善し、少ししかお客様に接しないお部屋へのご案内係や、お茶だしの係、布団敷きの係についても良かったかどうか、伺う欄を作りました。そうしたら今までは褒賞の対象にならなかった人たちも、名前を連ねるようになったのです。
有名な旅館でも、布団敷きは外注かしらと思うようなひどい接客のところもあります。以前に泊まったところで、入って来るなりシーツを畳の上に乱暴に投げて、笑顔のかけらもない無愛想な態度に驚いたのです。布団敷きも立派な宿屋としてのおもてなしの一部です。短い時間しかお客様と接しないフロントや布団敷きなどは、良い印象を持っていただくのは大変難しいことです。アンケート用紙の改善をしたところ、紋屋の従業員は各部署できちんと評価されていました。本当に今までは名前が上がったことがない人が、初めて褒賞されるというのは、何やら感動がありました。今までは単純に評価されるべきものがなかっただけだったのです。
個人プレーではない商売の場合、やはり極力平等に誉めて労いたいと思います。最近では客室係の中にも、お客様が調理長の料理に喜んでいるからと、頂いたチップを調理長へと言ってくれる人も出てきてはいます。問題は、実際に渡してくれることよりも、全員の協力で成り立っていることを意識しているかどうかということなのです。
昨年までは、単純に得点が多い順に名前を呼び、次から次と渡して終わっていました。今年は、どんな点が良かったかということを言いながら感謝の言葉を述べるようにしました。必ず一人一人の行動や働き振りをちゃんと見ているんですよ、と言いたかったのです。
一生懸命働いても、そのことについて見ていてくれているのか、見ていてくれてないのか分からない上司は多いです。そうそう給与は、今の時代に上がりはしませんが、自分の力を認めてもらえるということ自体が嬉しいものです。人それぞれみんな個性があって、向いている部分と向いていない部分とがある。自分に向いている部分については大いに力を発揮し、向いていない部分についても努力をする、そしてその努力を認めてもらえたら,もっと頑張れるかもしれません。私が入社したのは、今から5年前。そのときは一般社員だった私。私より先に入社して、先輩でもある従業員達もいっぱいいる。そういう私が評価しても、きっと嬉しくもないだろうなと、ずっと思ってきました。でも、自分自身に対する評価を適切にしてくれる人がいたほうがいいに決まっている。私が評価することで、もし喜んでもらえたら、私も嬉しいと思えたのです。
ひとつのお店が様々な力の総合体であること、それはとても望ましいことです。一人一人が力をつけ、それぞれの顧客様をもち、顧客様も、段々紋屋のそれぞれのスタッフに親しみを持つようになる。
ある顧客のF様は、客室係りはAさんが好き。AさんがいないときはBさんも良い。布団敷きはCさんが好き。紋屋の調理長の料理が好き、そして女将が好き。これなら、きっとそのお客様はずっと紋屋のファンでいてくれるでしょう。一人一人がみんな揃って成長できれば、そんな強いものはありませんね。
だからこそ、これからずっとスタッフの成長を見守りたい。みんながそれぞれに個性をもち、活躍できる場であってほしい。一人一人が輝ける職場作りを先頭に立ってしていくのは、やはり私たち経営者の大切な仕事だと思うのです。各々が紋屋の大事な存在であり、みんなもそれを認め合っている、みんなが先を競って自分自身の力の向上に努められる、いつかそういう職場にしたい。私も経営者として良い意味での自信をつけていきたいと思います。■久々にarujiの正体■(発行者arujiのエピソードです)
 aruji:「今朝うんこをしている時、何故か急に葉子を愛しいと思ったんだ」
 私  :「そんな時に思ってもらっても嬉しくない!」
 aruji:「良いじゃないか、
      一日に一回もしくは二回も思ってもらえるんだヨ!」
 私  :「.....(絶句)」  (by yoko)
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◆素顔の女将◆
業界の会議で会った、阿寒湖の宿の方(*)に「メルマガ読んでますよ」と言われた。その事を家内に言うと、「そりゃアカンですわ」と前世紀のギャグを言う。私のおじんギャグが、SARS並に家内に蔓延したか.....。(by aruji)
 (*) 阿寒湖の宿の方=「あかん遊久の里 鶴雅」の大西社長
            http://www.tsuruga.com

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