サービスの境界線
毎年のことながら、夏休みは様々な事件が発生します。その度に難しい問題があり、考えさせられます。
サービス業は、私たちがお客様をおもてなしし、それに対して対価を頂戴するそうした商売です。形がないですし、決まりもありません。どこまでお客様の要望にお答えするかは、私たちお迎えする側の考えによります。同じ宿屋でも、経営者の考えによってその内容は大幅に変わるものと推察します。
値段がよければサービスもいいかというと、建物施設は素晴らしくても、人間的な温かさがないサービスで終わる所も少なくありません。どんなに建物施設が素晴らしくても、おもてなしの心が伝わらなかったり、ひどい接客だったりすると値段が高いこともあって、余計に評価は厳しくなります。日々お客様を迎える中で、小さなことでも対応に憂慮することもあります。先日も海水浴にいらしたお客様のお子様(小学生)が、炎天下遊びすぎてぐずっていました。お食事がお部屋出しではないプランだったのですが、「体がだるいから部屋食にしてくれませんか?」とお茶だし係が言われてきました。
もちろんお部屋出しにして差し上げたいのは山々でしたが、同じプランをご利用のご家族で、海水浴にお越しの方も他にたくさんありました。社長は、このお客様だけ特別扱いは出来ないといいます。結局「お部屋だしの場合はお一人様2000円プラスになりますが、如何でしょうか?」と問い掛けて、結果やはり会場食で召し上がっていただきました。
私はなんとなく心残りでした。熱があるとか病で具合が悪いというのとは違います。遊びすぎもある程度その方の管理責任ではあります。でも人情として、多少なりとも具合が悪くなったのであれば、せめてお一人様2000円増しを1000円増しにして差し上げればよかったかなと。はじめから出来ないとかいくらかかるではなく、こちらの気持ちを伝えるすべはなかったかと考えあぐねました。先日、東京駅から高速バスで白浜まで帰ってくるとき、たまたま私の前に年配の男性がいました。その方は高速バスに乗るのが久しぶりだったらしいのです。房総菜の花号は、発足当時、システムが今と違っていました。途中の駅からでもその場で切符を買うことも出来ました。しかし乗っている方々を待たせてしまいますし、それは廃止になり、必ず前もって切符を買っておかなければいけなくなりました。
その方は「そんなことは知らないし、前は車中で買っても良かったじゃないか。それにどっちで払ったっていいじゃないか。私は客だぞ!」と、大声で乗車してからも怒っていました。運転手は、その方が降りる駅の近くまで来ると、「このバスは、事前に切符を購入して頂いております。切符は緑の窓口、全国のJRバスの窓口でお買い求めになれます。期間は1ヶ月前から販売しています」と何度も繰り返しました。よほど腹に据えかねたのでしょう。
どちらの気持ちも良く分かり、理解も出来ます。どちらが正しいかというと、やはり運転手の言っていることが正しいでしょう。恐らく、どちらも言い方に問題があったのではないでしょうか。そんなことで不愉快に成るのは、乗る方も乗られる方も嫌なのではないかと考えました。
いくらお客様でも、皆様にお願いしていることは平等にお願いをする。それはやはり正しいのかもしれません。ケースバイケースではありますが。先日、おねしょの問題で何件かもめました。実際私たちは、おねしょされたお布団を、メーカーやふとん屋に打ち直しやクリーニングを頼んでいます。実際にその額は高額で、私も初めて聞いたときは驚きました。掛け布団敷布団両方ですと、13000円もするのです。(しかも業務価格です)私たちは、お布団をまた使える状態に戻さなくてはなりません。戻すのにも時間が掛かります。
昔から使用していた重たくて古い布団は少しづつ新しい羽根布団にして、今は綿の敷布団が少しのこっているばかりになりました。しかし最近は、大人数で一部屋に入ることも少ないので、必ずしも全室に定員分の布団が入っている訳ではありません。連日おねしょの被害に合うと、布団の枚数が足りなくなってしまいます。
事前におねしょシーツの貸し出しがあるとご案内するにもかかわらず、「うちの子は大丈夫です!」とキッとにらまれてしまうこともありました。旅行先では気も緩み、つい冷たい飲み物を飲みすぎてしまいがちです。本来ならそのへんを考慮して、おねしょシーツの貸出しを頼んでいただけると助かります。
宿屋の中には、おねしょをしても打ち直しやクリーニングをしないで、干しておしまいという所もあるそうです。シーツも毎日は取り替えないところもあるのです。そうした所は、「お子様がする事ですから。」とやさしい顔をしているかもしれませんが、後のお客様から「布団が臭い」というクレームが後をたたなかったりするのです。障子紙をやぶいたり、シーツを少し汚したりの程度ではご料金を戴いていません。何処までが無料で何処からが有料か、という事なのでしょう。小さいお子様連れを歓迎している私たちは、こうしたことでその歓迎の気持ちをそぎたくないと考えています。私たちがして差し上げてもいいこと、して差し上げてはいけないこと。するのであればそれに対して対価を頂くこと。内容によっては無料で承れること。その決めは、大変微妙であり難題です。人件費も一番私たちの経営の首をしめることです。して差し上げたくても、して差し上げられないこともあるのです。
気持ちよくお過ごしいただきたい。喜んでいただくのが好きな人間が、この職を選んでいるものと私は思います。直接お客様に接して一生懸命おもてなしして、少しでも喜んでいただけたら嬉しいです。ですから、お互いに何かのトラブルの時に、気持ち悪さがあとに残らないようにしたいものです。
私たちの常識が必ずしも正しくない場合も、もちろんあります。私も紋屋に勤めて5年がたち、一番業界に染まり易い年数を迎えていると自覚しています。いつも初心に返り、自分がお客様だったらこういう時どう思うかなと。どうしたらお客様にこちらの事情を理解していただけるのか。許して戴けたり、反って喜んで戴けたりする事もあるのですから。いつもお客様の気持ちになって考えていけたらと思います。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
◆素顔の女将◆
鴨川シーワールドで、シャチの赤ちゃんが生まれた。その新聞写真を家内に見せると、「仮面ライダーみたいな魚ね」と言う。ん~そうねぇ、雰囲気は似てなくは無いけど、魚じゃないからね(笑)(by aruji)

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